へなちょこセリオものがたり

その105「とある日常」








「おーい、セリオぉ」

「はい? 何でしょう」

「うりゃっ」

 ふにふにふに……。

「うむ……」

 いい感触だ。

「あのっ、浩之さん……?」

「ん? どうかしたか」

 ふにふにふに……。

「あっ……いえ、何でも……」

 今日は『定期俺チェック』の日だ。
 毎晩触っているとはいえ、あの時の俺は俺であって俺ではないからなぁ……
だから時々こうして、日中にマルチやセリオの身体に異常がないかどうか調査
するのだ。

 しかも『定期』とか冠してるくせに、俺の気まぐれで前触れもなく開始する
から、こいつらも毎回面食らったりするのだ。

「触り心地抜群、と……うりゃ」

 くりくりっ。

「あっ」

 びくん!

「ふむ、感度も良好……今日もいい身体してるな、セリオ」

「あっ……ありがとうございます……」

 礼には及ばん、ふっ。

「きょ、今日も勿論『標準コース』でのチェックですよネ……?」

「無論だ」

 ちなみに他には『簡易コース』『特別コース』『特別コース2』が用意して
ある。
 必要なチェック項目に応じて、随時選択・追加されていく予定だ。

 つーわけで、ごーごーなのだ。






「あっ……はぁっ……」

 肩で息をしながら、小刻みな痙攣を繰り返すセリオを抱いて。
 軽く口付けしながら、耳元で結果報告だ。

「今日も文句なしだ……よしよしセリオ、愛い奴め」

 なでなで……。

「はい……」

 嬉しそうに目を細める彼女、俺もつられて嬉しくなって。

「ひゅ――――ぅほほほほほほほほですぅ!」

「……ん?」

 何だよ、折角いい雰囲気だったのに。

 ばむっ!

「きょに――――ぅはんた――――っ! 参上ですぅ!」

 ずびしっ☆

「マルチ……何やってるんだ?」

 変な仮面とコスチュームに身を包んだマルチ。
 いきなりドアを開けて入って来たかと思えば、カッコ悪いポーズ決めてるし。

「のんのんのん、私はきょにうはんたーなのですぅ」

 墨汁ボトルと刷毛とわら半紙持ってるし。
 以前一緒に読んだマンガ、アレの真似だな。

 つーかイヤーセンサーくらいは外しておけ、それだけでも正体がモロわかり
じゃん。

「……そういえばお前、何か胸が大きいな」

 いつもの312.85%くらいか(←やたら正確な数値(笑))。
 つーか、アレならもみ甲斐がありそうだな(核爆)。

「ううっ、パットなのが悲しいところですぅ」

 やっぱし。

「そういうわけでセリオさん、お胸いただきですぅ☆」

 だだだだだっ!

「あっ……」

「腰抜け腑抜けな今こそ、はんたぁちゃ――――んすっ!」

 セリオは今、足腰が立たない状態(爆)。
 おのれマルチ、俺はそんな卑怯な子に育てた覚えはないぞっ!

「お覚悟っ!」

「ああっ、浩之さんっ……」

 むぅ、セリオの状態が状態だけにめっちゃ可愛く見える。
 っていうかマジ可愛いって、その『今とても気持ちいいんだけど何か困った
状況になっちゃったし折角の雰囲気が台なしもういやーん助けてください浩之
さん』的な目線。






「止めい」

 ぺしっ。

「はぅっ」

 突進してきたマルチは、額への軽い一撃で難なく止まった。

「あうう〜、でかちちは敵なのですう」

「お前がどう考えようと勝手だが、墨汁を俺の部屋に振り撒く気か?」

 表でやれ……って、表で乳放り出すってのもそれはそれで考えものだな。

「それにセリオの胸、こんなに綺麗なんだし」

 ぱふっ。

「あっ、浩之さん……」

 ぎゅっ……。

 俺がセリオの胸に顔を埋めると、彼女は優しく俺の頭を抱きしめてくれて。

「ううっ……胸を通して、私の存在すら否定された気分ですぅ」

 いや……マルチの胸も、俺の好みという面では負けてないぞ(爆)。

「そんなことないって。ほらマルチ、今から『定期俺チェック』するぞ?」

「あっ、はぁい♪」

 ぱたぱたぱた……ぽふっ☆

 ……『きょにうはんたぁ』はどうしたんだ、マルチ?

「セリオも手伝え」

「了解デス」

「……ほえ?」

 ちょっと不思議そうな顔をするマルチ。
 さもありなん、今までは俺1人でチェックを行っていたのだから。

「たった今から『特別コース3』を追加だ」

「ふふふふふ……先程は少し弱りましたからネ」

 あ、ちょっと怒ってる。
 セリオもいい気分のトコ邪魔されたんだもんなぁ……。

「あ、あ、あうー……」












 んで。
 セリオと一緒に5回程、マルチのブレーカー機能のチェックを行った。
 セリオのブレーカーも、一緒に数回チェックしちまったけどな。






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