へなちょこセリオものがたり

その112「お約束。」








「さて」

「ん?」

 すちゃっ。

「おお、眼鏡なんかどうしたんだ? セリオ」

「伊達眼鏡ですよ……少し気分を変えてみようかと」

「似合ってるじゃん」

 うんうん、可愛いと思うぞ。
 でも、コトの際には外してくれよな……当たると邪魔だから。
 ……いや、やっぱりたまには眼鏡に思いっきり……(爆)。

「浩之さん」

「おっ!? おう」

 一瞬、考えを見透かされたのかとびっくりしたが。
 そんなことはなく、彼女は楽しそうに俺の目前に屈み込んで。

「私……浩之さんの眼鏡姿、見てみたいデス」

 きらりんっ☆

 うをう……眼鏡が怪しく光ったのは何度か見たことがあるが、可愛く光った
のを見たのは初めてだぜ……。

「駄目でしょうか……?」

 おおう、そんな残念そうな顔をするなっ!
 俺が見せてやる……ああ、見せてやるともさっ!

「よし、その眼鏡貸してくれ」

「はいっ♪」






「ん? 何か、度が入ってないか?」

「うふふふふふふふふふ」

 変な笑い声、俺が眼鏡からセリオに注意を戻すと。
 ふっと、セリオの右腕が揺らめいて見えて。

 すぱこ――――んっ!!

「いっ、いってぇぇぇぇぇ!」

 その手に握られていたのは、やけに大きなハリセン。

「おちちちち……お、おい……何の冗談だよ……」

 ふっ。

「これが本当の『どつきメガネ』」

 …………。

 しゅぴっ。

「あ」

 すっぱぁ――――んっ!!

「はぐっ……さすがは浩之さん、いい音をっ……」

 一瞬でセリオのハリセンを奪い、お返しとばかりに渾身の一撃をお見舞い。
 先程のセリオの動きよりも速かっただろう……正に電光石火、セリオですら
動くことも出来なかった。

「言うことはそれだけか」

 ぱんっ、ぱんっ、すぱぱぱぱんっ!!

「ひぅ……やっ、優しくしてください……♪」

 くそう、ロクに効いてやがらねぇ。
 いいんちょと、以前特訓したのが災いしたか……音は大きくても、痛くない
ハリセン叩きが身に付いてしまってるからなぁ(笑)。

「優しくして欲しいか……?」

「いっ、痛いのはちょっと趣味ではないのデス……ちょっとですがネ」

 どんなんが趣味やねん、お前。

「なら」

 すちゃっ。

 俺は未だかけっ放しだった眼鏡を外し、セリオにかけてやって。

「俺の相方、務まるかな?」

「……頑張りマス♪」






 その後しばらくハリセンの音が響き渡り。
 セリオのちょっとイケナイ声も、同じく響き続けたのだった。






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