へなちょこセリオものがたり

その121「見立ててみたって」








「あの、浩之さんっ」

「ん?」

「今日のデートですけど……私、どの服を着ましょうか?」

 で、デートって大きく言うなよ……。

「んー、何でもいいんじゃないか? お前、何着ても似合うし」

「そんな……投げやりですネ♪」

 口ではそう言いつつも、結構嬉しそう。

 今日は、2人でお買い物。
 マルチがメンテに行ってる間だけの、短いデート。

 セリオがわざわざこの為に、自分のメンテの日付ずらしたらしいけどな。
 だから、明日はマルチとデート……結構新鮮な気もするなぁ。

「んじゃ……俺は居間で待ってるからさ」

「はい、それではしばしお待ちを」






 居間で待つこと、およそ5分。
 もっと待つかと思ってたのに、予想外に早くセリオの足音が聞こえて来て。

 ぷにぽにっ……。

「あの、浩之さん」

 変な足音だなぁ。

「おう、早かった……なっ!?」

 さて、どんな可愛い服なのかな。
 そんな感じで振り向いた俺だったけど。

「ねっ、猫ぉぉぉ!?」

「あら、『何でもいい』って言われたじゃないですか」

「あ、ああ……まぁな」

「ですから、浩之さんのお気に入りのものをチョイスしましたっ♪」

 ぬ、ぬう……確かにこれはこれで嬉しいけどっ……!

「……わかった。んじゃ、ドコに出かけようか」

 むんず。

 あ、にくきうの感触が気持ちイイ……。

「……はい? まさか、これで表に……」

「そのつもりで着たんだろ? ほらほら、時間なくなっちゃうぜっ」

 ずりずりずり……。

「あああああっ、ご勘弁をっ」

「ああ? いいじゃん、俺は恥ずかしくないぞ」

「そんなぁ〜!」

 ずりずりずり……。






「っと……まぁ、冗談はこれくらいにして」

「じょ、冗談だったのですか……?」

 はぁ、はぁ、はぁ……。

 玄関先、ぺたりと座り込んで荒い息を吐いているセリオ。
 やたらと怯えたような表情で俺を見ている。

「勿論ぢゃないか、俺を信じてなかったのか?」

 にかっ(きらーん☆)。

「……浩之さんを信じているからこそ、なのですけど」

 がびーん。
 どんな信頼されてるねん、俺。

「ま……まぁ、それはそれとして」

「もう……」

「じゃ、今度こそ出かけるぜっ!」

 だきっ!

「はっ、はいいいいっ!?」

「さぁっ! 今日はどこに行こうかっ!」

 お姫様抱っこで抱き上げて。
 いきなりだったから、驚いて俺の首に抱き着く彼女。

「やっ……お願いですから、着替えさせてください〜!」

「着替えさせて……ください?」

 ぴゅきーん☆

「……はい?」

「そーかそーか、んじゃ俺が着替えさせてやるぜっ♪」

 ここぞと俺は、急反転。
 そこで意識は、急暗転。

「…………」

 ……ごす。






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