へなちょこセリオものがたり

その128「白き狂奏曲」








「浩之さん、お風呂が沸きましたよっ」

「おうよ、ひとっ風呂浴びるとするかぁ」

 バスタオルと俺の着替えを抱え、嬉しそうに走って来たセリオ。
 マルチの姿が見えないところを考えると……既に風呂場でスタンバイしてる
のだろうか。

 ふふふ、愛い奴等よのう。

 とか思いながら、片腕にセリオをぶら下げて風呂場へ向かうのだった。






「今日は、新しい入浴剤を入れてみました」

 入浴剤っつーとアレか?
 登別カー○ス・リベラとか、ソレ系のやつか?

「ふーん……」

 何気なく衣服を脱いでいると。
 脱衣所の隅に、見慣れた瓶が数本転がっていることに気付いた。

「……おい、アレは何よ?」

「あ……お片付けを忘れていましたネ」

 いや、何故ここにアレが転がっているか、それを聞きたかったのだが。

「ささっ、裸では風邪を引いてしまいます……中へどうぞ」

「お、おう」

 半ば誤魔化そうとしているように思えたが、セリオに促されるままに浴室の
扉を勢いよく開け放つ俺。

「ぃよっし、今日も綺麗に洗ってやるぜぇ〜♪」

 湯船に敵影・マルチを確認、それと共に鼻をくすぐる香しき匂い。
 ……こっ、コレはっ!

「セリオ……まさか、入浴剤って?」

「ええ、お察しの通り○ルピスを少々」

 『少々』じゃねぇだろ。
 ……っつーかこの色、匂いさえなきゃ単なる入浴剤入りのお湯にしか見えん。
 よし、気にしないことにしよう。

「浩之さんっ、身体を洗ってから入るとよいのですぅ〜♪」

 つーかお前、何故に既に入ってるよ。

「今日の温泉は温カ○ピスで、効能は……」

「もういい」

 ぺしっ。

「……ったく、勿体ない真似しやがるじゃねぇか」

 そんなことを言いつつ、手桶に温○ルピスをすくう俺。
 頭からざっぷり被り……うをう、甘臭え。

「……なぁ、こんなんで身体洗っていいのか? 後でべたべたしそうだけど」

 つーか確実にべたべたするだろう。いやマジで。

「それは、最後にシャワーで流していただくとして」

 ずびしっ☆

「早く全身をお洗いになって、私達とめくるめくカルピ○の世界を……」

 はいはい。
 わっかりましたよーん。

 俺は妙にぬるぬるする液体で全身を洗った後、おもむろに湯船に飛び込む。
 その拍子に、白い飛濁がマルチやセリオのほの朱い顔に飛び散ってしまい。

「あっ……」

「おっと、悪い悪い……今綺麗にしてやるからな」

 そう言って彼女達の頬に付いた白い飛沫を、ぺろっと舐める俺。

「んー……ちょっと味が濃いかなぁ」

「あら……すみません、どれくらいに薄めましょうか?」

「そうだな、あと水を1.28リットルってとこか」

 当然ながら、この数字はいつものフィーリングだ。
 駄菓子菓子、そのフィーリングが結構ストライクど真ん中ってことが往々に
して多いのだ。

「はい、では……半分ずつ」

 セリオはマルチに目配せをし、そしてマルチも頷いて答える。

「ん?」

「「…………」」

 ぶるるっ。

 2人の少女は、ほぼ同時に身を震わせる。
 それが何を意味するのか……それを考える前に、俺の身体は動いていた。

 ごくごくごく……。

「……も、もうちょっと薄めて欲しいかなっ」

「ま、まだ足りませんでしたかっ!?」

 おうよ。
 今日の俺は、ちょっと薄味な気分なのさ。

「あのさ、出来ればバスタブの縁にしゃがんでさ……」

「「…………」」

 無茶な頼みだ。
 自分でもそう思う。

 ……が、それを実行してくれるマルチとセリオ。
 嫌が応にも、俺の視線は彼女達に釘付けになる。

「みっ……見られていると恥ずかしいですっ」

「……あの、その……あと如何程足せばよろしいでしょうか?」

「いい味になったら合図するからさ……じゃ、ヨロシク!」

「「はっ、はい……♪」」






 バスタブに注がれる、無味無臭の……いわゆる、『綺麗な水』。
 さてさて……どれくらいで勘弁してやろうかなっと♪






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