へなちょこセリオものがたり

その132「ブラック・ボックス」








 居間に入ると、テーブルの上に小さな黒い箱が置いてあった。

「ん? 何だこりゃ」

 手に取って振ってみると、からからとも音がしない。
 ……空か?

「あ、浩之さん」

「おう、セリオ……この箱、一体何よ?」

「ええ、主任からお預かりしたモノなのですが」

 おっさんから?
 その一言で、俺の背筋に冷たい汗が走る。

「何でも、今日は本社の監査が入るそうで……これだけは、と渡されました」

 うわ。
 すげえヤバそうな匂ひぷんぷん。

「うお、よく見たらスイッチみたいなのが……」

「ああ、ソレは絶対に押さないでくださいネ?」

 ニヤリ。

「……ああ、気を付けるよ」

 危うく押しそうになっていた俺。
 一瞬びくっとして、そろそろと指を離そうとする。

「コレ……一体何よ?」

 押すなと言われれば押したくなるのが人情。
 だが……今回ばかりは、笑ってはいるがセリオの目がマジだ。

 ……押してはいけないと、俺の本能が命令していた。

「ええ、以前開発した要人暗殺用小型爆だ……」

「いや、もういい」

 つまりはそういうことか。
 ふぅ、俺も危うく吹き飛ばされるところだったぜ。

 ことん。

 テーブルに元通り小箱を置き、ほっと一息。

「セリオぉ、冷たい○ルピスでも入れてくれや」

「はい、只今」

 にっこり。

「浩之さーん、たっだいまですぅ〜☆」

「おう、お帰り」

 買い物に行っていたマルチが帰宅。
 玄関からそのまま居間にダッシュして来たマルチだったが。

「あー! これ、一体何ですかぁ〜?」

 買い物袋を放り投げ、テーブルの小箱に顔を寄せ。

「あ、何だかボタンが付いてますぅ〜」

「あ、マルチ! それは……」

「ぽちっとな」

 かちっ。

 その時、丁度セリオがキッチンから戻って来て。
 青ざめるが早いか、手に持ったお盆を取り落として。

「あ……」






 どっかん。






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