へなちょこセリオものがたり

その135「鬼さんこちら」








「浩之さん、今度こそ豆まきの用意が出来ました」

 今度は虎縞レオタードを着たセリオが、俺を呼びに来た。

「今度こそ大丈夫なんだろうな?」

「ええ」

 引きつった笑みを浮かべるのも、先程のことがあってこそ。
 アレは俺もちょっとやり過ぎたと思ったが。

「それでは参りましょう」

「おう」

 虎縞レオタードには、尻尾も付いていた。
 俺はそれをにぎにぎして楽しみながら、居間へ向かった。






「はう〜、待ちくたびれたのですぅ」

「ははは、悪い悪い」

 さっきからお預け状態で、マルチはぷぅっと頬を膨らませて見せる。
 その頬をつんつん突付いて、俺は笑った。

「それでは浩之さん、これをどうぞ」

 ぽん、と豆の入った箱を手渡すセリオ。
 俺は豆をむんずと掴み取り、投げる構えに入る。
 マルチとセリオは、それを見てきゃあきゃあと走り回り。

「行くぞ〜」

 マルチとセリオめがけて、俺は豆を放り投げ……ようとしたが。
 いつの間に取り出したのか、大きなハンマーをぶんぶんと振り回すマルチ。

「はふー、鬼さんの攻撃なのですぅ」

「おいおい、何だそりゃ」

「やられる前にやるのですぅ!」 

 ぶんぶん。

「うひぃ!」

 俺は堪らず、豆の箱を放り出して逃げ回る。

「待ってくださ〜い」

「待つかよ馬鹿ぁ!」

 後ろに気を取られながら走っていたら……ぽふん、と柔らかいものに衝突。
 何かと思ったら、セリオの胸だった。

「よ……よぉ、セリオ」

「うふふ」

 にっこり笑顔が何とも怖い。
 が、慌てて顔を離そうとしたら……ぎゅっと抱きしめられた。

「うふふ……鬼と言えば」

「い、言えば……?」

「金棒が必須ですよネ」

 さすりっ。

「うひょわぁ」

 いきなり俺の股間に手を伸ばすセリオ。
 突然の感触に、俺が間抜けな声を上げていると。

「あーっ、セリオさんだけずるいのですぅ!」

 ひょいとハンマーを放り投げ、マルチも抱き着いて来て。

「私も浩之さんに陵辱の限りを尽くすのですぅ!」

 そんなことを言いながら、マルチは俺の服を引き剥がしにかかっていた。

「や、止めろぉ! 鬼ぃ〜!」

「はい、今日は節分ですから」

 その言葉を聞いた俺は。
 2人の格好も相まって、妙に納得してしまったのだった。






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