へなちょこセリオものがたり

その136「踏み踏み」








「マルチぃ、マッサージしてくれぇ」

「は〜い」

 うつ伏せになった俺の背中をまたいで、マルチがぽふっと乗る。
 背中に感じる心地よい重みを感じながら、マッサージ開始。

 もみもみ……。

「あー、そこそこ」

「えいえい、このくらいで如何ですかぁ?」

 うーむ、日増しに腕を上げているものよのう。

「マルチ、今度は足で踏んでくれ」

「はぁい、踏み踏みするですぅ」

 マルチは立ち上がり、俺の腰や背中の辺りを足でぐりぐりと踏む。
 それがまた何とも気持ちよく、思わず溜め息が出たりなんかして。

「はふ〜」

「えへへー、気持ちいいですか? 浩之さん」

「おー」






「……浩之さんは、踏み踏みされるのがお好き!?」






 マルチにマッサージしてもらった後、軽く○ルピスなんぞ引っかけていた俺。
 そこへ、おずおずとセリオがやって来た。

「浩之さん、私にもマッサージさせてくださいな」

「お? 今やってもらったばっかりだけど……まぁ折角だから、頼もうかな」

「はい」

 コップをその辺に置き、マルチの時と同じようにうつ伏せに。
 セリオが上に乗るのを、今か今かと待っていたら。

 ……ずしん、ずしん。

「……あ?」

「浩之さん、お待たせいたしました」

 セリオは、何か人型の工作機械みたいなのに乗っていた。
 それで俺の方に向かって歩いて来るもんだから、俺仰天。

「なっ、それ何よ!?」

「ええ、アスファルト工事等の際に使用する『たいたんぱぁ君』デス」

 いや、そうでねくて。

「地盤を固める程の強力な足踏み、是が非でも体感していただきたいとっ」

「やっ、止めれぇ!」

 慌てて起き上がる俺。
 が、何時の間にか俺の足にはロープが巻き付けられていて。

「逃がしはしません……お覚悟を」

「マッサージ! 単なるマッサージだってばよ!」

 そんなもんで踏まれたら平面俺になってまう。

「うふふふふ……」

「ひ、ヒィ」

 俺、為す術なし。
 ここまでか、と覚悟を決めたのだけれど。

「と言うのは冗談でして……」

「おひ」

 冗談でこんなでっかい機械を家に持ち込むなよな。

 セリオは俺の視線もどこ吹く風、颯爽とその機械から降り立った。

 かつっ。

「……かつっ?」

 セリオの足元をよーく見ると、彼女の髪と同じ色の真っ赤なハイヒール。

「殿方は、コレで踏まれるのがお好きであるとの情報がありまして」

「……いやまぁ、それは何とも」

 俺か?
 俺はまぁ……それはそれでいいと思う。

「というわけで、どうぞうつ伏せになってくださいナ」

「お、おう」

 ほっと安心した俺は、セリオの言葉に素直に従う。
 そうすると、セリオは恐る恐る俺の背中をハイヒールで踏み付けてみて。

 ぎゅむ。

「ど、どうですか……?」

「あー、よくわからん。もうちょっと強目に」

「はい」

 ぎゅ、ぎゅう。

「…………」

「浩之さん、如何されましたか?」

「あー……何だか違う意味でキモチイイ」

 いわゆるソフトSMってやつ?
 何だぁ、こういうのなんだったらもっと前に始めていてもよかったかも。

「……はい?」

「もっとだ! セリオ、俺をもっと踏み付けのぐりぐりにしてくれぇ!」

「ひ、ヒィ」

 かつかつっとハイヒールの音を立てながら逃げるセリオを、俺は。
 何時の間にか元気になっていた我が44マグナムでロックオンしつつ、彼女
を追いかけるのであった。






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