へなちょこセリオものがたり

その141「安眠のススメ」








「眠い……」

 春眠暁を覚えず、とはよく言ったものだ。
 この時期、いくら寝ても眠り足りない感覚に襲われる。

 いや、毎晩夜更かししているせいもあるのだが。

「浩之さん、寝不足ですか?」

「ああ、お前らが寝かせてくれないせいでな」

「あらまぁ、それは心外な」

 ○ルピスの入ったコップをテーブルに置き、セリオは微笑む。

「逆ではないのですか?」

 ぱふっと俺の隣に座り、俺の腕を取り。
 その綺麗な指先で、つつーっと俺の肌をなでる。

「うふふ……昨夜も素敵でした」

 何を思い出しているのか、セリオはうっとり頬を染め。

「おいおい」

 俺はカル○スをぐいっと飲み、セリオの顔を見つめる。
 その目は、何かの期待に満ち溢れていた。

「でも……眠いのであれば、今夜はゆっくりお休みしていただきましょう」

「わ、わかってくれたか」

 俺、一安心。
 ほっとしてカルピ○の残りを飲み干そうとしたら。

「その代わり、今から可愛がってくださいませ」

 ぱぷーっ。

 俺は思わずカル○スを噴き出してしまう。
 その横でセリオは、頬を染めながら衣服をはらはら脱ぎ始めていて。

「お、お前……えっちになったなぁ」

「あら、こんな私にしたのはどなたでしょうか?」

 にっこり。

 既に下着姿のセリオは、俺にしなだれかかって来て。

「む、むぅ」

 ここまで来たら、男として後には退けまい。

「よ、よし……終わったら昼寝するからな俺は」

「はい♪」






 時間にして、約5分後。
 ぐったりとしているセリオにシャツをかけてやり、俺は立ち上がる。

「はっ、早っ……」

「それでイっといて何が文句あるか」

 ぐりぐり。

「で、ですが……普通はもっと時間をかけて、こう……」

「また今度な」

「ああっ」

 いそいそと服を着て、俺は自室へ向かう。
 その後ろで、ゆらりとセリオが立ち上がる気配。

「そっ、そんなに眠りたいのなら……」

 ぶんっ。

「あ?」

 俺が振り向くより先に。

 ごすっ。

 視界の端に、巨大な黄金鎚。
 薄れ行く意識の中で、セリオが一言。

「おやすみなさい、浩之さん……ごゆっくりどうぞ」






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