へなちょこセリオものがたり

その145「お医者さんごっこ」








 かっぽーん。

 わしゃわしゃわしゃ……。

「浩之さん、かゆいところはありませんか?」

「おう、脳天5時の方向が少し」

 わしゃわしゃ。

「あーそこそこ」

 セリオに髪を洗ってもらいながら横目でマルチを見ると。
 いつものようにあひるの玩具で、ばちゃばちゃと楽しそうに遊んでいた。

「なぁマルチ、あひるがそんなに面白いか?」

「はいー、それはもう♪」

 いい歳して……って見た目も中身も幼いんだから仕方ないか。

「あら浩之さん、あれって結構面白いんですよ?」

 しゃぱー、とシャワーで泡を洗い流しながらセリオが言う。

「そうか? 単に子供っぽいだけにしか思えないけどな……」

「子供っぽい遊びにこそ遊びの原点があるのデス」

 むぅ……確かに永く遊ばれ続けて来た遊びと言うものは、単純かつ子供でも
出来るようなものばかりだ。
 なかなか真理なのかもしれんな、今の言葉。

「よし、じゃぁ子供の遊びってやつをやってみるかぁ」

 全身綺麗に洗ってもらった俺は、湯船に入ってマルチを抱っこする。

「えへへー」

 意味もなく嬉しそうなマルチの頭をなでつつ、俺は何で遊ぼうかと思案する
のであった。






「と言うわけでそこに横になれ、セリオ」

「……は?」

 風呂から上がって、みんなで○ルピス一気飲みした後。
 すっきりさっぱりしたところで、俺は突然言い放った。
 さすがのセリオも予想していなかったのだろう、怪訝な顔で俺を見る。

「マルチ、確か看護服があったろ。あれ着て来い」

「はぁい☆」

 ぱたぱたぱた……。

「ひ、浩之さん……まさか」

「おう、子供の遊びったらこれが定番だろ?」

 そう、『お医者さんごっこ』。
 淡く儚い幼少の頃の記憶。
 よくあかりを半裸にひん剥いて泣かせたものよ。

 ……今考えると、すんげえことしてたのな。

「大人になると出来ない……いや出来るけど何故かお金がかかってしまう遊び
を家庭で楽しもうって寸法さ」

「あの……それは既に『大人の遊び』なのでは?」

「何を言う! 子供の遊びにこそ原点があるってさっき言っただろう!」

 びしっ!

「うっ……それは確かに言いましたが」

「浩之さん、用意出来ましたぁ〜」

「よし! では今から『お医者さんごっこ』を始める!」

 俺の高らかな宣言と共に、セリオの顔が引きつり。
 まずはパジャマを脱がそうと、セリオににじり寄った俺だったが。

「はぁい☆」

 がばぁ。

 マルチは何を思ったか、セリオではなく俺に向かって突進して来た。

「うわっ! マルチ、違う違う! 目標はセリオだって!」

「だってぇ、セリオさんで遊んでもあんまり楽しくないのですぅ」

 そんなことを言いながら、しっかり関節を極めて俺の動きを止めるマルチ。

「ふふふ……一時はどうなることかと思いましたが、形勢逆転ですネ」

 ゆらりと立ち上がるセリオ。

「マルチさん、今日は浩之さんの仕組みを調べてみましょう」

「はーい♪」

「あ、あの……『仕組み』って一体……?」

 にやりと笑うセリオ。
 右手の中指をおっ立てて、くいくいっと曲げ伸ばしして見せて。

「ま、待て……その指、一体どうするつもりだぁ!?」

「男性にはですね、『前立腺』と言う器官がありまして……」

 ずぬっ。

「ああん」

「うわぁ」

 何に驚いたのか、静かな声を漏らすマルチ。
 その間にも、セリオの指は俺の大事な部分の中で蠢いていて。

「そこを刺激すると……ほぅら」

「う、うわぁ……びんびんですねぇ」

「これからもっと面白いものを見せてあげましょう」

 セリオは俺の目を見つめて……そして、先程実験台にされようとした恨みを
晴らすかのように薄ら笑いを浮かべて。

「せ、セリオ……止めっ……」

 




「も、もう勘弁して……」

 何度目……いや何十度目かの絶頂を感じながら、俺は何とかそれだけを言う。
 さすがに許してくれたのか、指をぬぽっと抜くセリオ。

「いやぁ、さすがにあれだけ出すとすんごい量になりますねぇ」

「ええ、身体の限界まで挑戦しましたから」

 俺の身体で挑戦するな。

「さぁ浩之さん、後片付けしたらベッドで可愛がってくださいネ」

「お、お前……俺にこれ以上どうしろと……」

「いえ、またこれがありますし」

 くいくいっ。

 セリオは、たった今抜いたばかりの右手の中指を曲げ伸ばしする。

「……ま、まだいぢめるの?」

「冗談ですよ……今日は私達も十分に楽しませていただきましたし、ゆっくり
とお休みくださいませ」

 よ……よかった。
 これ以上何かされたら、マジで赤玉が出てまうと思う。

「ところでセリオさん、拭いても拭いてもまだ綺麗にならないんですが」

「そうですね……いっそのこと中に戻しますか?」

「それだけは嫌――――っ!」






 危うく泣いてしまうところだったが、それこそ冗談だったようで。
 マルチとセリオに両脇を抱えられながらも何とかベッドに入り、糸が切れた
ようにぱったりと眠りに入る俺。

 そして悪夢にうなされる。
 ……お医者さんごっこ、怖いよう……。






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