へなちょこセリオものがたり

その150「乙女心はちょ→複雑」








「……ほふぅ」

「ん? どうしたセリオ」

 台所で洗い物を済ませたセリオ。
 だが俺に甘えに居間へ戻って来る様子もなく、不思議に思った俺は台所へ。

「あ、浩之さん……」

「どうしたんだよセリオ、どっか調子でも悪いのか?」

 辺りを見回すと、特にそんな風もなく。
 いつも通り、完璧に片付けられている食器類。

 うむ、異常ナッシング。

「いえ……洗剤の泡を見ていましたら、何故か悲しい気持ちになって来まして
……」

 むぅ、何か難しいこと言ってる。

「泡がどうかしたんかい」

 そんなことより、早く居間に戻ってごろごろしようぜ。

「飛んで消えてしまう運命の、小さな泡……どうしてすぐに消えてしまうので
しょうか?」

「そりゃお前、表面張力がだな」

「いえ、私が求めているのはそんなまともな答えではなくてデスね」

 あ、素に戻った。

「たまに乙女チックな気分に浸ろうと思ったらこれです……」

 セリオは、はふーと深く溜め息を吐いた。

「浩之さんには、年頃の乙女を2人も囲っていると言う自覚がないのですか?」

「つーかもうお手付きで乙女じゃないし年頃って言っても生まれたばっかだし」

 あとイメージ悪いから囲ってるって言うな。

「がびーん」

 あ、ショック受けてる。

「ううっ……私達には夢見る乙女心を堪能することも許されていないのですね
……鬼のようなご主人様のせいで」

「はいはい、んじゃ行くぞ」

 俺はセリオの身体を抱きかかえ、居間へ直行。

「うう、浩之さんの馬鹿馬鹿馬鹿っ」

 ぽかぽかと何だか痛い気もするが、まぁ気にせず。

「つーかお前、夢見る乙女って言ったらアレだろ」

「はい?」

 俺はソファーにセリオを座らせて。

「好きな男の腕の中で思う存分甘え倒す」

 ぼふっ、と隣に座る俺。

「さぁ来い、いくらでも甘えるがいい」

「……男の側の都合のいい考えですネ」

 セリオはぷいっとそっぽを向いた。

「んじゃ今日は甘えるのいらないのか?」

「いえ……それはそれ、これはこれデス」

 ぽふっと俺の胸に倒れ込んで来るセリオ。

「はっはっは、だからセリオって好きさ」

 なでなでなで。

「うう、いいように踊らされているような気が」

「そんなことないぜ?」

 俺はセリオの頭をなでながら。

「乙女心はわかんないけど、セリオが喜ぶことなら何でもしてやるからさ」

「……はいっ」

 セリオは嬉しそうに微笑んだ。






「で……一体コレは何よ?」

「ええ、何でもしてくださると言われたものですから」

 寝室には、荒縄や先の分かれた鞭……どでかい蝋燭まで用意されていた。

「なぁ……お前の乙女心ってこんなんなん?」

「はい? 聞こえませんが?」

 いやーん。






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