へなちょこセリオものがたり

その152「ざ・ぱんつ」








「はふー、今日も疲れたぜぃ」

 俺は制服を床に脱ぎ捨てると、ベッドにばふっと倒れ込んだ。
 今日も1日ご苦労さん、俺。

 ……と。
 視界の隅に、白くて小さな丸いものが入った。

「何だ?」

 拾い上げてみると……パンティだった。
 正面に小さなリボンが付いていて、それ以外の装飾はない。
 シンプル・イズ・ベストってやつだな、嫌いじゃないぜ。

「マルチかセリオのどっちかだよなぁ……」

 ここにぱんつがあるってことは、昨夜脱がした時にそのまま忘れ去られたの
だろうか。
 いや待て、たたんだ洗濯物を持って来た時に転がり落ちたのかもしれん。

 とりあえず、使用済みかそうでないかを確認しよう。
 俺はそのぱんつを小さく丸め、鼻に押し付けた。
 何かちょっとどきどきしているのは秘密だ。

 くんくん。

「……さすがにわかんねぇな」

 頭に被ってみよう。

 ぱつん。

「……うーむ、わからん」

 次はどうやって確認してみよう。

 そうだ、マルチの方が服のサイズが小さいはずだ。
 セリオのものであれば、多少キツくても俺にも履けるはず。
 ってことは、履いてみればわかるってことじゃねぇか!

「そうと決まれば……」

 ぬぎぬぎ。

 でも……女の子のぱんつって妙に小さいのな。
 でも伸びるからいいのか。

 よっ、と……。

 と、俺が片足をぱんつに突っ込んだ瞬間。

 ばたむ。

「浩之さん、○ルピス特売が本日までデ……ス……」

「せっ、セリオ!?」

 くらっ。

「ひ……浩之さんにそんな趣味があったなんて……」

「まっ、待て! これはだな、そこに転がっていたぱんつが誰のものかを確認
しようとして……」

 ぼぶし――――ぅ。

「あ」

 セリオにとって、あまりにも刺激が強い画だったようだ。
 俺はこれ幸いと、自分の衣類を身に付けてセリオをベッドに寝かせてやる。 

「な、何とか誤魔化せる。いやさ、これをセリオに履かせておけば!」

 ぴくりとも動かないセリオ。
 俺は慣れた手付きで彼女のぱんつを脱がせ、件のぱんつを履かせる。

「ふぅ、これで万事オッケーだな」

 と、手にしていた布切れで汗を拭う。

「セリオさん、浩之さんはまだすっ飛んで来ないですか……ぁ?」

「おう、マルチ」

 そこでマルチの動きが止まる。
 しかも、可愛い顔が微妙に引きつっていて。

「ひ、浩之さん……その手の中のものは?」

「あ?」

 と、手にしていた布切れを見ると……セリオのぱんつじゃん!

「いやその、これはだな」

「ひっ……浩之さんのえっち妖怪・ぱんつ脱がせ――――っ!」

 マルチは意味不明なことを叫びながら、俺の部屋から飛び出して行った。

「くっ……元はと言えば、あんなところにぱんつが転がっていたから……」

 でもとりあえず匂いは嗅いでおこう。

 くんくん……すはーっ。

 うむ、いい香りだ。さすがはセリオ。
 って、これじゃマルチに言い訳出来ないじゃん!

 俺はぱんつを放り投げ、慌ててマルチの後を追うのだった。






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