へなちょこセリオものがたり

その154「HONEY SWEET TORMENT」








「うふふふふ……」

 ぼたぼた……。

「ど、どうしたセリオ? 涎が……」

 ぼたぼた。

「あ、浩之しゃん」

 ひっ、浩之『しゃん』っ!?

「と、とにかく何があった? お前がそんなになるとはただごとではあるまい」

 俺は紳士らしくハンケチで彼女の涎をふきふきしつつ、とりあえずソファー
に座らせる。

「ええ、あれは先程私が充電がてら仮眠を取っていた時のこと」

「ふむふむ」

「私は、夢を見たのでしゅ」

 セリオ、涎よだれ。

 ふきふき。

「で、どんな夢だったんだ?」

「ええ、それはもう素敵な夢でした……♪」

 ぽっと頬を染め、それを恥ずかし気に手で覆う。
 くぅ、一体どんな夢だったんだおい。

「まずは浩之さんが私を抱っこして寝室まで連れて行き」

「うむ」

「嫌がる私の衣服を無理矢理剥ぎ取り」

「うむ?」

「あろうことか、手足の自由を奪って動けないようにしてから陵辱の数々を」

「…………」

 あー、あれか?
 夢には、その人の深層心理だかが反映されるってやつ。
 つまるところ、セリオはそんなプレイをしてみたいと。

「陵辱の内容に関してはここでは触れませんがネ」

 ちらり、と俺の様子を窺うセリオ。
 これは何かを期待している目だ。

「ちなみに道具類は全て用意してありマス」

 ばむっ。

 どこから出したのか、セリオのお道具袋。
 その中には、縄 無知 鞭蝋燭バイブに浣腸あなたの為なら我慢して見せる〜
的なアイテム群が。

「……そ、そうか」

 俺はこれらの道具をどう使えば、セリオがあれ程放心するのかを考えていた。
 夢でシミュレートしていただけに、生半可なプレイでは逆に俺が折檻されて
しまうだろう。

「や、やるか?」

「や、やりましゅか?」

 また涎だよ、ふきふき。

 セリオは嬉しそうに、対して俺は半分の自信と半分の不安で笑い合う。
 ここは1つ、まい蔵書のハウツー本を基調としつつオリジナルな組み立てを
行ってだな……。

「で、では……♪」

「お、おうよ」

 俺はお道具袋をぶら下げて、セリオをお姫様抱っこして。
 やや重い足取りで、2階の自室へと向かうのであった。






 ベッドの四隅にぴん、と張られた荒縄。
 人の力ではこれから逃れることなど不可能であろう。

 俺はいやらしい笑みを浮かべつつ、ベッドの中央で未だ暴れようとしている
今日の獲物に顔を寄せる。

「へへへ……今日はたっぷりと楽しませてやるぜ?」

「くっ……耳カバーさえあれば衛星機能も使えるものをっ……」

 セリオのロールプレイも順調。
 って言うかあんな縄、奴が本気になったら木綿糸みたいなもんだしな。

「わかるか? お前は今、単なる女の子なんだよ。何も出来ないで、俺の好き
なように嬲られるだけの存在なんだよっ!」

 ぴしっ!

「あうっ!」

 セリオの太股に、幾筋目かの赤い筋が走る。
 数度鞭打っているので、もうどれがいつ叩いた痕なのかもわからない。

 俺はうぃんうぃん唸る不思議な棒を手にして、にやりと笑う。

「まぁ……生意気な口は、塞げばいいだけのことだよな?」

「ひっ……」

 棒にたっぷりとローションをかけ、そしてセリオの下半身へと手を伸ばす。

「くっ、口って……」

「馬鹿、女の子にはいくつも口があるだろう?」

 それに、上の口を塞いでしまっては責めに対する反応が楽しめない。

「いっ、嫌ぁぁぁ……」

 下の口も、これから何をされるかわかっているらしく……たらり、と淫靡な
汁が垂れ始めていた。
 が、俺はそこを通り過ぎる。

 ずぬっ……。

「はぐっ!?」

「おっと、挿入れるトコ間違えたかな? まぁいい、今日は穴と言う穴を全て
塞いでやるんだからな」

 形の整った綺麗なお尻から生えたように見える、1本の動く棒。
 その動きに合わせるように、セリオは苦悶の声を漏らしていて。

「ほら、全部入った」

「くっ、くぅ……」

 美しい顔が微妙に歪む。
 これだけのことをされていても、まだプライドを捨て切っていないようだ。

「さすがはお嬢様だな……でも、これならどうだ?」

 俺はセリオの脚の間に割って入り……そして、自分の欲棒を挿し入れる。 

「あっ、ああっ!」

「どうだ? 前も後ろも塞がれた感じは……」

 目を見開き、声も出せないでいるセリオ。
 その開けたままの口に、俺は涎を垂らし込む。

「ほら……こんなことされた経験ないだろう? 今日はとことん汚してやるよ」

「んぶっ……んっ、ぷはっ」

 吐き出したら更に激しい折檻が待っていると判断したのか、彼女は俺の唾液
を全て飲み込んだ。

「よしよし、その調子だ」

 そして、俺は腰をスライドさせる。
 ずちゃっ、ぬちゃっといやらしく音を立てながら。

「あっ、嫌ぁっ……」

「嫌だって割には、なかなかいい具合に締め付けて来るじゃないか?」

「だ、だって……」

 何か文句を言おうとしたその口を、自分の口で塞いでやる。
 彼女の舌を絡め取り、舐る。ひたすら舐る。

 やがてセリオの身体からはほとんどの力が抜けてしまい、縛られたロープに
完全に吊るされる格好になって。

「おいおい……全身の力は抜けても、こっちはしっかりくわえ込んで離さない
のかよ?」

「うっ、ああんっ……」

 落ちた。
 もうこいつに抵抗すると言う意思はあるまい。
 俺は全てのロープをナイフで切断して、彼女の身体を自由にしてやった。

 そして両脚を抱え、腰のスライド運動を再開する。

「あっ、あんっ……」

「おいおい、感じてるのか? さっきまではあんなに嫌がってたくせによ」

 先程までとは、明らかに反応が違って来た。
 汗ばむ肌、荒い呼吸……官能の声。そして何より、彼女の身体は正直だった。

「前と後ろに挿入られてる気分はどうだ? ん?」

「そっ、そんなこと……っ」

 俺がこうして動いている間にも、相棒も頑張ってうぃんうぃん唸っている。
 彼女の膣中から、その振動が伝わって来る。

 俺は豊満な胸を乱暴に揉みしだき、その先端をつまみ上げる。

「くぅっ!」

「お、締まるなぁ……これがいいのか? ん?」

 ぎゅうっ。

「いっ、痛っ……」

 口ではそう言いながらも、遂には自分から腰を動かし始めたセリオ。
 俺はふっと鼻でそれを笑いながら、スパートに入った。

「おらおら、2本刺しでイくとこイきなっ!」

「はっ、激しっ……過ぎ……っ」

 ぎしぎしっと、ベッドが激しく揺れる。
 セリオの身体は、まるでロデオライダーのようにがくがくと揺さぶられて。

「あっ、あっ……あ――――っ!」

 きゅう、と膣中が収縮する。
 それに合わせて、俺も白濁液を彼女の体内へと吐き出したのだった。






「で、どうだった?」

 あー、慣れないことすると身体も心も疲れるぜ。

「は、はい……すんごくよかったデス……」

 手足に残った荒縄の痕をさすりながら、まだ絶頂の余韻を楽しんでいるのか
……セリオの視線は宙をさ迷っている。
 俺はその肩を優しく抱き、濃厚なキスをお見舞いしてやった。

「んっ……はぁっ……」

 ちゅぱ、と音がして……唾液が細い糸となって俺達の口を繋いでいた。

「……なぁ、俺ってこういうの向いてないっぽいんだけど」

「そうですネ、ちょっとぎこちなかったかもしれません」

「だろ?」

 俺はほっと胸をなで下ろした……が。

「しかし、何度か訓練を積めば……」

 じゅるり。

「きっとしゅてきなえっち生活が待ってましゅじょ?」

「せ、セリオ……」

 俺は退いた。
 とことん退いた。
 ベッドから転げ落ちるくらいに。

「も、もう勘弁してくれよ」

「浩之しゃん……しゅてきでしたじょ?」

 じゅるじゅる。

 最早涎のことはどうでもいい。
 俺は抱き着いて来ようとするセリオの頭に、斜め45度の角度で手刀を叩き
込んだ。

「あ」

 ざしゅっ。

「ふぅ、これで元に戻ってくれればいいが……」

 そんなわけで。
 俺はセリオが目覚めるのを、びくびくしながら待っているのであった。






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