へなちょこセリオものがたり

その157「ぶぎゅる」








 ぶぎゅる。

「うおう」

「あ、すみません」

 セリオは居間を掃除中、俺はその居間の真ん中で横になって本を読んでいて。
 掃除に夢中で気付かなかったのか、背中をセリオに踏まれてしまい。

「大丈夫ですか?」

「お、おう」

 結構いい角度で抉り込んで来たな。
 とか思いながら、背中をさする俺。

 この時、俺はまだ気が付いていなかったのだ。

「掃除の邪魔だから2階に行ってるぜ」

「はい、わかりました」

 とったったったった。

 軽快に階段を上って行くと、何故か俺の部屋のドアが開いていて。
 中を覗き込むと、マルチが一生懸命掃除に励んでいた。

「よう、マルチ。頑張ってるな」

「はい、浩之さんの為ですからっ」

 いや、毎晩お前達も使うからある意味自分の為とも言えるぞ。
 俺はとりあえずベッドに横になり、また本を読み始める。

 すると。

 ぶぎゅる。

「うおう」

「あ、すみませんですぅ」

 ……また背中踏まれた。

「いや、気にすんな」

「は、はい」

 マルチはベッドの傍にある窓を拭いていた。
 ベッドに乗らなければ手が届かない位置なので、それで俺を踏んでしまった
ものと思われる。
 と、ここで俺はあることに気が付いた。
 2回も踏まれて2回とも同じことを考えたのだから間違いない。






「と言うわけでこれを用意した」

「黒タイツに……」

「私はいつもの白にーそっくす?」

 うむ。

「昼間、お前達に踏まれて少々思うところがあってな」

「ですから、あれは私の不注意でして……」

「私も不注意全開でしたぁ」

「いや、怒る気など毛頭ない。むしろ」

 俺はゆっくりと服を脱ぎ。
 全裸になると、ベッドにばふんと飛び込んで。

「俺は発見したのだ」

「「はい?」」

「女の子に踏まれると気持ちイイ」

 2人は心底げんなりした顔を見せたが。

「ささ、それらを着用して好きなところを踏むがよい」

「はぁ、まぁ……そう言われるのであれば」

 セリオはするすると黒タイツを履く。
 マルチも慣れた手付きでニーソックスを履き、早速俺を踏んでくれて。

「この辺が気持ちいいですかぁ?」

 ぐりぐり。

「あー、そこそこ」

「……これでは単なるマッサージなのでは」

「いや違うぞセリオ、俺の発見した法則によれば」

「よれば?」

「黒タイツはすり付けてもらうと気持ちイイ」

 げんなり。

 今度こそセリオは気力をなくしたようだ。

「さぁセリオ、あんなとこやそんなとこに存分にすり付けてくれ」

「はぁ……」

 げそっとした顔でとりあえず言われた通りに足や太股、股間にタイツを装備
した脚をすり付けて来るセリオ。
 俺はその何とも言えないすべすべ感に、恍惚となって。

「ああっ……もっと踏んで、もっとすり付けてっ!」

「あの、マルチさん……浩之さんにはこんな趣味が?」

「いえ、私も知りませんでしたが……浩之さんですしねぇ、と納得しています」

「確かに」

 何か妙な会話がされていたが、俺の耳には届かなかった。
 そう、この2大快楽を貪るのに一生懸命だったのだ。

「ああもう我慢出来ねぇ、2人ともベッドに横になれ!」

「「は、はい」」

 言われた通り、素直にベッドに横たわる2人。
 俺は涎を垂らしながら、2人に近付いて。

「や、やっぱり最後はこうでなくちゃいけませんよネ」

「はい、何てったって浩之さんですからねぇ」

 はぁはぁ。

 俺は荒い息を整えることもせず、2人に飛びかかって。

「脚! 魅惑の脚ー! ニーソックスも黒タイツも大好きだー!」

 すりすりすりすりすりっ。

「……脚だけデスか?」

 がすっ。

「……きゅう」






「全く、私達の身体には目もくれず……」

「いやでもセリオさん、私達の脚だからこそ浩之さんは興奮してくださったの
では?」

「ああ、なるほど……そういう考え方もありますネ」

 セリオは、嬉しそうな表情のまま気を失っている俺を見やり。

「そうですね、目を覚ましたら大サービスして差し上げましょう」

「はーい☆」

 セリオは、俺の頬をつんつん突付く。
 その表情は、どこか楽しそう。

「浩之さん……ちょっと早とちりしちゃいました、すみません」

 ぺろっ。

 可愛く舌を出したセリオだったが……俺の意識はもうしばらく戻らないので
あった。






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