へなちょこセリオものがたり

その160「あーん、或いはああん」








「だうー……」

「浩之さん、大丈夫ですかぁ?」

 俺の額に載せていたタオルを裏返しながら、マルチが声をかけて来る。
 残念ながら俺は、安心させてやろうと微笑んでやることも出来なかった。

 だ、大丈夫じゃねぇ。
 その一言を言うにも、多大な労力を必要としていた。

「全く夏風邪とは……日頃の鍛錬が足りない証拠デスね」

 つーか原因はお前らと昨夜裸の狂宴してたせいだと俺は推測する。

 つんけんしたセリフだが、その手にはほこほこのお粥。
 マルチと同じく心配そうな顔をして、部屋の中に入って来た。

「マルチさん、体温は計測しましたか?」

「あ、今からやるですぅ」

 と、タオルを取って俺の額に自分の額をくっ付けるマルチ。

 ぴとっ。

「…………」

「…………」

 目の前に、マルチの顔。
 すぐそこに、可愛い桜色の唇。

 ……ちゅっ。

「はわわっ! 浩之さん、いきなり何するですかー!?」

「いやぁ、つい」

「……病人のくせに、妙なところだけ元気だから困ります」

 ぽふ、とセリオはベッドの端に座る。

「それでマルチさん、体温は……わからなさそうですね」

 マルチは、はわはわと顔を真っ赤にして暴れていて。
 俺のキス1発であんなんなるなんて、全く可愛い奴だぜ。

「では私が計測いたしますネ」

「お、おう」

 そう言って髪をかき上げ、額を俺の頭に近付けて来る。
 これは……チャンス、再度到来!

「浩之さん、キスは後で沢山してあげますから……今はなしですよ?」

「お、おう」

 さすがに読まれていたか。
 でもだからと言って、男としてやらないわけには行くまい。それに女の子に
失礼に当たるしな。

 ぴとっ。

 体温がかなり高目になっている俺は、最早正常な判断は出来ないってことで。
 セリオに注意されたけれども、上の空で理解出来なかったってことで。

 ……ちゅっ。

「…………」

「…………」

「……しちゃいましたネ?」

「お、おう?」

 ずぬん。

「あ、あふぅ」

「直腸検温にモードチェンジ。左手中指、エントリー完了」

「あ、あの……セリオさん?」

 ぐりぐりと俺の後ろの穴をいじくり回すセリオ。
 時々前立腺が刺激されて、それがまたあまり嫌でもない自分が嫌だ。

「言っても聞かない悪い子には、やはりお仕置きですよネ?」

 にっこり。

「ああっ、あああああ」

 ぐりぐりぐりん。

「せ、セリオ……ちょっ、止め」

「止めません。お仕置きですから」

「あああああ」

 ……びくっ、と一瞬跳ね上がる俺の身体。

 情けないことに。
 セリオの中指に、天国へ誘われてしまう俺なのだった。






「……ああ、肝心の体温を計るのを忘れていました」

「え?」

「私の指先が体温計代わりになっていますから……はい、あーん」

 そう言いながら、セリオは笑顔でさっき俺の尻に挿入た指を俺の口へ。

「ひ――――! 俺が悪かった――――!」






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