へなちょこセリオものがたり

その4「チェーンはいつもでんじゃらす」








「浩之さん、ちょっと質問が」

「ん? どうした、セリオ?」

 セリオが何か聞いてくるなんて、珍しいな……。

「ベッドの下にあった、この本なのですが」

 後ろ手に持っていたその本を、俺の目の前に差し出し。
 俺はその題名を確認するや否や、慌ててそれを引ったくった。

「な……何故見付けた!?」

「いえ……お掃除をしていたら、ごくごく自然に」

 ……ってセリオ、俺の目を見て言ってみろ。

「……それは、資料だ」

 2人の男が重そうな鎖を手に、1人の女性に迫る姿。
 そんな写真や何やらが、たっぷりつまった危ない本だ。

「資料、ですか」

「うむ……これからの世の中を生きて行く為には、何でも知っている、何でも
出来るに越したことはないからな。勉強の為だぞ」

「……なるほど、浩之さんはこういうことが出来るようになりたい、と」

 むぅ……したいのは山々だし、マルチとも何回か挑戦はしてみたが。
 けど、ただ単純に好奇心なんだよ……俺は若いんだよ。

「では、こういうことはご存知ですか?」

 セリオは俺の耳に顔を寄せ、ぼそぼそっと何やら耳打ち。
 言葉毎に耳にかかる息がこそばゆい。

「……それ、本当か?」

「来栖川データ・バンクからの情報です」

 む、むぅ……勉強になるぜっ!

「そして、丁度こういうものが」

 じゃらっ……。

「な……何故そんなものが……いや、今どこから出した?」

 マルチのスカートよろしく、セリオは髪の中からそれを取り出した。
 そ……その辺に収納スペースでもあるのか、こいつら?

「ふふふ……浩之さんが知りたいのは、そんなことなのですか?」

 セリオは、微笑んで。
 でも、いつもとは違う……何だか艶っぽい印象を受ける。

「い、いいのか?」

「はい……ですが、ソフトにお願いします」

 こっ……これは、青少年の止まるところを知らない好奇心を……!






 庭の片隅、ご近所には死角になる場所で。
 音や声が聞こえはしないかと、ひやひやしていたが。

「……結構いいもんだな」

「……こういうのは初めてでしたが、如何でしたでしょうか」

「よかったぜ」

 2人して、荒い息を整えながら。
 セリオって、案外熱くなるタチだったのな……。

 じゃらり……。

 重い鉄の鎖を持ち上げながら、ふと疑問が湧いてくる。

「セリオ、どうして急にこんなことを?」

「……私も、興味が湧いたのです……それに」

「それに?」

 その時……セリオの顔を見ていた俺は、胸の奥がどきんと鳴った気がした。

「……浩之さんとなら、きっと出来るのではないかと」

 にこっ。

「セリオ……」

 たった今コトがすんだばかりだというのに、俺の中で再び衝動が起き上がる。

「はい、お好きなだけお付き合いいたします」






 それから30分程して。
 また一勝負終えた俺達は、汗を流す為に風呂へと向かった。






 庭には散々バラバラになった藁人形と、打ち捨てられた鎖鎌。
 ふぅ……本当、いい汗かいたぜっ!






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