へなちょこセリオものがたり

その11「歴史のお時間」








「マルチさん、今日はちょっと宗教の話など」

「ほへ? 宗教……ですか」

「信じるもの、崇めるもの……心の支えのことです」

「……私には、浩之さんがそれですぅ」

 くらっ。

「そ……そのことは、後でゆっくり話し合いましょう」

「はい」






「その昔……鎖国されていた日本では、ある一つの宗教が主に信じられていた
のです」

「歴史の授業で聞いたですー」

「時の支配者は、そこに新しく入って来た宗教を奉ずることを禁じました」

「何ででしょう?」

「自分達の地位が、危うくなるとでも思ったのでしょうか。その教えは彼らに
とって、都合の悪いものであったと考えられます」

「なるほど、元からあった方は、特に問題なかったんですね」

「禁じようとすればするほど、民は反発するものです。思惑に反して、密かに
その教えは広まっていきました」

「浩之さんに『なでなで禁止』って言われたら、とってもなでなでして欲しく
なるようなものですね」

「……まぁ、概ねそれでいいかと」






「時の支配者は、遂に強硬手段に出ました。言うことを聞かない民は、殺して
しまおうと」

「あうう、暴力はいけないんですー」

「現在のような『理屈』の通じない時代です……『侍』という、現在の軍隊の
ようなものを組織してその宗教を信じていた者達の討伐を始めたのです」

「あ……あうう……」

「ですが……そんな時代とは言えど、人殺しは大罪。それを免ずる大義名分が
作られたのです……その宗教の、中心となる人物の名を冠することによって」

「そ、それは……?」

「○りすとごめん……」

 ごめす。

「なっ……何を教えているかぁぁぁぁっ!」

「い……痛いの……」

 目に涙を浮かべ、俺の踵をくらった後頭部をさするセリオ。

「あー! 浩之さん、お帰りなさいですぅー☆」

「マルチ……今のセリオの話、忘れろ」

「ほえ? どうしてですか?」

「何度も言わんぞ。わ・す・れ・ろ」

「あ、あうう……こ、恐いですぅ……」

「返事は?」

「は……はいぃ……」

「よし……さて、セリオ」

「は、はい?」

 可愛く笑顔で返事しても駄目だ。

「お前は……今日のなでなで5割減、及び今後しばらく3割減だ」

 とはいっても。
 その日の気分次第だから、いい加減な数字だがな。

「そっ、そんな……浩之さんって、何てゴム体な」

 そんな、人がラバーメンまたの名をゴム人間みたいに聞こえる発音は止めれ。

「……もっと減らそうかなぁ」

「あ……あああっ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ」

「そんな……浩之さん、酷いですぅ」

「ええいっ、黙れ黙れ黙れぇっ! お仕置きするぞっ!?」

「ああっ、浩之様がご乱心をっ」

 ああっ、そんなに嬉しそうに逃げるなっ!
 ついつい追いかけたくなるじゃないかっ!

「あ〜れ〜っ……」

「ふっふっふ……お主達、なかなか……」






 ……結局。
 そのまま3人で時代劇プレ……いやごっこに夢中になってしまい。
 セリオの処分は、うやむやになってしまった。

 ……まぁ、いいか。






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