へなちょこセリオものがたり

その14「ケダモノだもの」








 今日は何となく、それぞれが似ている動物を挙げてみることにした。

「セリオは飄々としてるから、豹って感じだよな」

「そんな感じですぅ」

 自分で言っておいて何だが、どんな感じなんだ?

「……なるほど」

 お前も納得するなよ。






「……マルチさんは、子狸……しかも転んだり失敗したりがやたら多い」

「うんうん、そんな感じだ」

 言い得て妙ってやつかな。

「あうう〜」






「じゃあ、俺は?」

「「…………」」

 そ、そんなに考え込むなよ。
 俺に似ている動物って、そんなにわからないものかな?

「「……ケダモノ」」

 ぼそぼそと。
 2人して、俺から少しづつ離れていき。

「え? よく聞こえなかったぞ」

「「ケダモノぉ」」

 ど、動物の名前って言ってたのに……。

 くそう。
 そのケダモノと一緒に住んでる物好きは、どこの誰なんだっ!?

「……お前らの気持ちは、よぉくわかった。ケダモノは1人で風呂に入って、
1人で寝ることにするぜ」

「あ、ケダモノさんがすねちゃったですー」

「その辺、ケダモノなのに可愛いですね……くすっ」

「ですー……くすっ」

 お、お前ら笑うなぁ!
 くそう、しばらく本当に1人で過ごしてやる。

「ちっ、お前らなんかもう知らん」

 俺が完全にへそを曲げて、居間を出ようとした時。

「浩之さん」

「あぁ?」

 今度は何を言うのかと、振り向いてみたら。

 ぴらっ……。

「お腹を空かせたケダモノさんには、エサをあげなくてはいけません……そう
思いませんか?」

「わ、私もあげますぅ」

 ぴらぴらっ……。

「ケダモノさんはいつも満足した状態でないと、いつ他の人を襲うやもしれま
せんし」

 ちらっ……。

「そっ、そんなのは嫌なんですぅ……私達が、満足させて差し上げますぅ」

 ちらちらっ。

 お前ら、いつの間にそんな絶妙な『見せ技』をっ!?
 ……っていうか、もう辛抱たまらーんっ!

「ぐ、ぐるるるるぅ……がうがうっ!」

「「きゃぁ〜っ♪」」






 ……というわけで。
 ケダモノさんは、ほくほく満足しましたとさ。






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