へなちょこセリオものがたり

その16「行け行け掴み取り☆」








「……お茶、お待たせしました」

 ことん。

「さんきゅ、セリオ」

 さわっ。

「…………」

「あ、あれ……? 怒った?」

「いえ……何故お茶のお礼を言うのに、私の魅惑的な臀部を触るのかと」

 ……真剣な顔して悩むなよ。
 って言うか、自分で魅惑的とか言うなよなぁ。

「そんなに気にするな。スキンシップってやつだ」

 性的嫌がらせとも言うが。

「……なるほど、それで身体の一部を触るのですね」

「まぁ、触られたら『いやーん、えっちぃ☆』とか言って、その手をぺしっと
叩いてやれば完璧だな」

「……了解」






 と、丁度そこへマルチ現わる。
 両手で煎餅のお盆を持って来ていた。

「お茶菓子ですぅ、浩之さん」

「おう、さんきゅ」

 さわさわっ。

「あんっ、そういうことはお部屋で……」

 ぷちぷちっ……はらり(いそいそ)。

「服を脱ぐな、服を」

「あうう、一応居間もお部屋の内ですよぅ」

「……な? こんな感じで『ボケ』てもいいな」

「……なるほど」

 相変わらず真剣な表情。
 こんなことでもいちいち真面目に受け取る辺り、いいところとも悪いところ
とも言えるんだよな……。

「ほむ? 何のお話ですかぁ?」

「ちょっと、な……」












「……それでは、ただ今より先程のお話を実践してみたいと思います」

「……それはいいが……」

 触りやすいように尻をこっちに向けるな、セリオ。
 そんなんじゃ楽しみが半減してしまうじゃないか。

「さぁ、どうぞ」

 ずいっ。

「お、おう」

 ……可愛くてついなでたくなるようなヒップが、座っている俺の目前に。
 『どうぞ』言われても困るのだが、まぁ折角だから存分に触らせていただく
ことにしよう。

 さわさわっ……。

 うむ、なかなかの感触だ。

「……『いやーん、えっちぃ☆』」

「……さらっと言うなよぉ」

 棒読みはないだろうに。
 ……となると、次は儀式的に俺の手を払い除けるのかな?

「……えい」

 ぶぅぅぅぅんっ……。

「うをわっ!?」

 思わずセリオから手を離した俺。
 直前まで俺の手があった場所では、セリオの手が淡い金色の光を放っていた。

「……何故逃げたのですか?」

「……その前に、その手は何なんだよ」

 っていうか、『えい』って何なんだよ?
 ……あ、スカートに触れた部分が焦げてる。

「必殺『輝いてる掌』です。オーバーロードさせたエネルギーを手指に収束し、
触れたもの全てを滅却する技です……発生した余剰熱は髪から放熱し」

「俺を必ず殺してどうするっ!?」

 ……ったく、おちおちお触りも出来ないじゃないか。

「すみません……つい」

「『つい』で殺されてたまるかっ!」

「ですが……触りたければ、いつでも言っていただければ……」

「あ、そうなの?」

「はい、いつでもどこでもどんな部位でも……」

 ぽっ。

 ……やったぁ。






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