へなちょこセリオものがたり

その35「ナースのお仕事」








「うーん、頭が痛ぇ」

「……ですから、あまり飲み過ぎないようにと……」

「別にいいだろ? カルピ○くらいさぁ」

「ですが、お身体に障ります」

 ……さわさわさわっ。

「あんっ」

「こんな感じにかぁ?」

 炸裂、浩之ちゃんギャグ。
 さぁセリオ、お前はどう返すっ!?

「…………」

 ちゃきっ。

「人が心配していれば……!」

「ま、待てっ! 何かする前に、その手に構えた怪しげなパラボラは何なのか
教えてからにしてくれぇ!」

「問答無用」

 かちり、ぼわんぼわんぼわん……。

 セリオが手に持っているパラボラ・アンテナから、目に見える輪っかつーか
音か、これ? がいくつも照射され。

「はうっ……がくっ」

 何故か一瞬で気を失ってしまった俺なのだった。






「んん……ここは……?」

 気が付くと、俺は自分のベッドに寝かされていた。

「あら、気が付かれましたか」

「せ、セリオっ!?」

 な、何か変わった帽子被ってるっ!?

「私もいますぅ」

 ま、マルチまで。
 ……2人して、俺を挟んでベッドにもぐり込んでいて。

 しかも、2人とも白衣。
 何だよ、俺の看病するからってそこまで凝ってみたのかぁ?
 お前らなぁ……俺の意識がある時にやってくれ、こんな嬉しいことは。

 ああっ、そのカッコで『……お注射の時間です』なんて言われた日にはもう
……俺の方から注射しちまうかもしれん。

「……頭、大丈夫ですか?」

「……そんな言い方は止めてくれ」

 どういう意図で言っているのか、非常に悩むトコロである。

「……頭痛は治まりましたか?」

「あ、そういえば」

 気が付いたらすっきりしてるぜ。

「って……さっきから1時間くらいしか経ってないのか」

 時計を見ると、そう大して時間も経っていなかった。

「ええ。本来なら一晩はかかるところを、身体中の新陳代謝を活発化すること
によって軽い傷病の治癒なら数刻で済ますことが出来ます」

 ほほう、やけに説明的だな。
 が、確かに頭痛が取れたのには驚いたぜ。

 ありがとうな、セリオ。

「へぇ、それがあのパラボラの効果なのか?」

「いえ、あれは……こほっ、こほこほっ」

 な……何故に咳き込む!?

「今の治療は私とマルチさんが浩之さんを間に挟んだ状態で、代謝促進電波の
キャッチボールをすることによって治癒効果を高めるという……」

「……パラボラは?」

「およそ自然治癒で完治する傷病に対しては、高い効果が得られます」

 何故だか、必死に目を背けながら。
 俺が無理に視線を追うと、首をひねってまで視線を外すセリオ。

「そうか、凄いな……で、パラボラは?」

「……マルチさん、お昼ご飯は一緒に作りましょうか」

「あ、はいー♪」

 2人はベッドからするりと抜け出し。
 俺が静止する間もなく、逃げるように階下へと降りて行ってしまい。

 部屋には、俺1人だけがぽつねんと残され。

「なぁ、あのパラボラ……一体何だったんだよぉぉぉっ!?」

 わからないことは、知りたくなるもの。
 俺も、たった今から『知識の探求者』の仲間入りだ。

 っていうか己の身で受けたことだけに、すっげぇ気になるだけだが。

「おのれ……絶対に聞き出してみせるっ!」

 てなわけで。
 とりあえずセリオに口を割らせる為には、どんな具合に攻めると最も効果が
高いか……そんなことを考え始めた俺なのだった。

 ……ベッドの中でいぢめるしかないかな、やっぱ。






<……続きません>
<戻る>