へなちょこセリオものがたり

その43「ざ・ちぇんじ!」








「……というわけで、私達のボディは相互換性が高いのデス」

「つまり、あれこれ入れ替えたり出来るってことか?」

「ええ」

 ふむ、それはいいことを聞いた。
 ……でも、身体のパーツを入れ替えたりしたら大変なことになるだろうし。

 と、来れば。

「あのさ、1日だけ中身を入れ替えてみないか?」

「中身を?」

「そうだ……マルチはセリオに、セリオはマルチに。いつもの視点が変われば、
ものの見え方も変わってくるだろうし」

「……それだけ、ですか?」

 うぐぐ、鋭い奴め。

「……風呂とかベッドとか、ちょっと違う気分を味わってみるのも一興だろ」

「……えっちですね」

 う、うるせえ。






 で。
 まさか本当にメモリを入れ替えたりするわけにもいかないので、マルチには
セリオが用意した謎のヘアバンドとセリオの耳カバーのスペアを付けさせて。
 それを使うことによりマルチも衛星とのリンクが可能になって、衛星を通じ
動作や感情をそれぞれのボディからボディへと転送して……ううっ、俺もよく
わからんぞ。
 早い話……中身は元のままなのだけど、仮想的にセリオの反応はマルチが、
マルチの反応はセリオが返すようにしたということで……やっぱりわからん。

 まぁ学校のこともあるし、明日俺が帰ってから晩にみんなで眠るまでという
ことで話が付いた。






「ただいま〜」

 さてさて、どんなもんだろうな……どきどき。

「あ、お帰りなさいですー」

 ぱたぱたぱた……。

「おう、セリ……じゃなかったマルチか」

 たたたっ……ぽふっ!

「えへへっ、なでなでしてくださいー」

 …………。
 めっちゃ可愛い。

 セリオの身体、セリオの声でこんな反応されると……ううっ、夜まで待てん
じゃないか畜生っ。

「おうさ、いくらでもなでなでしてやるぜぇ」

 なでなでなでなでなでなでなでなで。

「あ……何だか感覚が違うから、変な感じですぅ」

「ん? あんましよくないのか?」

「いえ……セリオさん、ずるいですぅ。私のボディよりも感覚が鋭敏ですー」

 ……ってことは、つまり……。

「気持ち、いいのか?」

「は、はい……凄く……」

 ぽっ。

 ……俺は今、猛烈に感動しているっっ!
 よっしゃ、ならばこのまま……!

「……それは、感度設定である程度変更出来ますが」

 おお、マル……じゃなくてセリオ。
 ……こうして見ると、びしっとキメてるマルチってのも……いいもんだな。
 ちょ、ちょっと踏まれてみたくなって来た。

「そうだ、セリオの方は調子どうだ?」

「……少し妙な感じですが、概ね問題ありません」

「そんなつまんない答えじゃなくてさ……」

 俺はマルチ・インセリオボディを首からぶら下げたまま……って、セリオの
身体が密着していて、すっげぇいい感じダ。
 ともかく、そのままセリオ・インマルチボディの傍まで歩いて行って。

 なでなで……。

「あっ……!?」

 びくんっ!

「どっ、どうした!?」

 なでたらいきなり身体が弾けるように動いて。
 あー、びっくりした。

「い、いえっ……何でも」

「そうか、んじゃ」

 なでなでなでなで。

「はぅっ!?」

 びくんっ!

「お、おい……本当に大丈夫なのか……?」

「ま、マルチさん……こちらのボディの方が、随分感度が高いのでは……?」

「えー? そんなことないですよぅ。セリオさんの身体の方が絶対に……」

「いえ、いくら何でもここまで高くした覚えはありま……」

 そこで、はたと気付いて俺を見る。
 何かマズいことを言ってしまった、そんな顔のセリオに俺は。

「……自分で、気持ちよくなる方向に調整したのか?」

「……そうデス」

 ……むぅ、セリオも快感の虜だったとは。
 
「……浩之さんを、もっともっと感じたかったのです」

「そっか、嬉しいこと言ってくれるぜ」

 なでなでなでなでなでなでなでなで。

 そして、更に。
 頭だけと言わず、胸やお尻もなでまくったりして。

「ああっ……あっ、はぁぅ……はんっ、や……やめ……あああああん」

 びくびくっ、びくくっ!

 苦もなく、セリオ撃沈に成功。
 なるほど……いつものセリオも結構感じやすいのかと思っていたが、身体が
入れ替わるとそれが更に顕著になる……と。
 ううむ、マルチの身体で必死に快感を耐えているセリオの喘ぎ声……うおお、
マジで夜まで我慢なんて出来そうにねえっ!

 ……その件に関しては、何かの因果関係があるのかもしれないが。
 とりあえず今日のとこは、妙に感度が上がったマルチとセリオを責め倒そう
かなぁ……。

 にやり。

「ひっ……浩之さん……その、不敵というかイヤラシイ笑いは一体……?」

「あうう……こっ、恐いけど何故か楽しみな自分を発見して戸惑ってしまって
いる私なんですぅ……」

 2人は、ちょっとだけ恐がっていたけど。
 もうすでに、俺を止めることは出来ないのであった。






 ……で、今日は今までの最高記録を大幅に更新。
 マルチやセリオはおろか、俺まで記録更新……恐るべし、入れ替え。

 ううむ、みんなでコレが癖になったら困……らないよな、たまにはやっぱし
違ったな気分を味わってもいいよなぁ。






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