へなちょこセリオものがたり
その44「湯上りに一杯♪」
今日も今日とて、マルチとお風呂。
セリオは後で入るんだそうだ、ちょっと残念だったが。
「くっはぁ、いい湯だったぜぇ」
「はいー、いい出汁が出ましたぁ」
「……飲んだのか?」
「少しだけですぅ」
……などと、キッチンに行ってカルピ○を飲もうと勇んでいたら。
「……水、出ませんよ」
「なっ、何ぃっ!?」
「もうしばらくの間、断水です」
そう言って、俺に町内の回覧板を見せるセリオ。
っていうかそれ、早くお隣に回して来いっての。
「断水かぁ……」
そっ……それはつまり、俺に○ルピスを原液のまま飲めということかっ♪
……べ、別に嬉しいわけじゃないぞ……多分。
「だって、風呂は?」
「夕方のうちに水だけ張っておきましたから」
う、ううむ。
仕方ない、原液で飲むかっ♪
「ま、それじゃ仕方ないよな……」
冷蔵庫から、茶色の瓶を取り出して。
栓を開けて、コップに注ごうとしたら。
「……お待ちください。それではお身体に障りますから、少々お待ちを……」
セリオはそれをコップに1/5程度注ぎ、そのままキッチンから出て行って。
1分もしないうちに、戻って来た。
「どうぞ、少々温いかもしれませんが」
「ああ、氷入れりゃ大丈夫……だけど……」
ぬ、温い?
「なぁ、何を入れた?」
「おっ、お気になさらずにっ」
慌てふためくセリオを視界の端に収めつつ。
「ま、まさか……」
「バレましたか……左様です」
「お前、風呂の残り湯入れたのかっ!?」
がくんっ。
おおっ、セリオがコケた。
「い、いえ……違います、綺麗な水ですよ……一応」
「こら、『一応』って何だ」
ううむ。
他に水の当てと言えば……。
あ。
俺はあることに気付き、一気にコップの中身を飲み干す。
そして例の原液をまた1/5程コップに注ぎ、セリオに渡して。
「……水入れるトコ、見せて♪」
「…………」
顔を真っ赤にして、セリオは俯いてしまった。
で。
横でその様子を見ていたマルチが、セリオの手からコップを奪い取って。
「わっ、私が入れますぅ」
「おおっ、それは願ってもない」
「じゅ……順番にしましょう、マルチさん」
……それはつまり、アレか?
『私達2人が何回でも出してあげるから、沢山飲んでくださいねっ☆』って
ことかッッ!?
……げふっ。
まさか、1瓶全部5倍希釈で飲むハメになるとは思わなかった。
ううむ……たっぷり溜めてたのな、お前ら。
っていうか、鼻血垂らしながら眺めては飲んで眺めては飲んで。
すっごく幸せな一時でした。
今度は洋酒で水割りでも作ってもらおうかな……。
<……続きません>
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