へなちょこセリオものがたり

その49「桜の花咲く頃」








「……お花見の季節、ですね」

「そうだな」

 たったそれだけで、花見行きが決定した。






 舞い散る桜の花びら。
 立ち並ぶ桜の並木。

 俺達はマルチとセリオが作った弁当を引っ下げて、マジに花見に来ていた。

「マルチさん、何故桜の花は桃色なのか……ご存知ですか?」

「んーと……えへへ、わかんないですぅ」

 む、例のお約束……木の下に死体が埋まっていて、その血を吸っているから
花がほんのり桜色……ってやつか?
 マルチを悪戯に恐がらせるのも何だし、ちょっと止めておくか。

「おい、セリ……」

「実はですね、仲睦まじい恋人達を見て照れているんですよ」

「へぇ、桜さんは照れ屋さんなんですね」

「今は、私達……浩之さんと『らぶらぶ』な私達を見て、ピンク色に染まって
いるのです」

 そ……そうなのかっ!?
 そんな話、初めて聞いたぞっ!?

「今の色……心なしか、薄いような気がしません? もっとピンク色を濃ゆく
してみようとか……思いません?」

「も、もっと『らぶらぶ』になれば……?」

「ええ、もっともっと赤く照れるはずデス。私達も嬉しいし浩之さんも嬉しい、
桜もいい色になって……正に一石三鳥ですネ」

 きらーんっ☆

「ひっろっゆっきっさーんっ♪」

「な、何だ?」

「私達と、もっと『らぶらぶ』するですぅー♪」

 まさかセリオの話を鵜呑みにっ!?
 ってーか、俺達がこれ以上らぶらぶしてどうするっ!?

「……具体的に、どうするつもりなんだ? セリオ」

「ふふふ……その気になりました?」

 にやり。

「ばっ、馬鹿言え……そんなことは」

「ですけど、顔がにや付いてますが?」

 にっこり。

 セリオは、荷物を持っている俺の腕を抱いて微笑む。

「あーっ、私もするんですーっ!」

 ぴとっ!

 それを見たマルチが、もう片方の俺の腕を抱き。

 両腕に時折感じる、柔らかな感触。
 いい場所が見つかるまで、ずっとそのまま歩いて行って。

 桜の花よりも、両側にいる可愛い花達を眺めていた俺。
 舞い散る花びらに包まれる彼女達は、普段より一層魅力的に見えた。






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