へなちょこセリオものがたり

その61「だんごだんごれぼりうしょん」








「え〜、おせんにキャラメルはいががですかぁ〜」

「お……マルチ、せんべいくれ」

「はぁい、なでなで3回ですぅ」

 なでなでなでなでなで。

「釣りはいらん」

 ばりばり、ぼりっ。

「わぁい、得したですぅ」






「……なるほど、そういう手もありましたか……」






 ぼりぼり……。

「……お茶はいかがですか、浩之さん?」

「おっ、さんきゅ……せんべい食ってたら丁度欲しくなったとこだよ」

 俺はセリオの手から、湯飲みを受け取ろうとして。

 ぐい……。

「お? おい……手、放してくれよ……」

「……3回デス」

 ……こいつ、さっきのマルチとのやり取りを見ていたのか。

「ほらよ」

 なでなでなで。

「……違います。なでなでではありません」

「じゃあ、何が3回なんだよ?」

「…………(ぽっ)」

 おいおい。
 茶が冷えちまうだろ、そんなコトしてたら。

「セリオ……何して欲しいか、言わなきゃわかんないだろ?」

「きっと、浩之さんが今考えているコトで当たりデス」

「だから、言えっての」

「恥ずかしいデス……けど、浩之さんのお望み通りに……きゃっ」

 あ、駄目だ。
 俺を見ているかのような目は、すでに焦点が合ってない。

 何か、扉を開いてしまったようだな。

「なでなでしか認めん」

 俺がそう言うと、ちゃんと理解しているのかは不明だが頷くセリオ。

「……仕方ないですネ」

 ふぅ、わかってくれたか。

 なでなでなでなでなで。

「じゃ、お茶もらうぞ」

「あ、その前に……」

 ん?

 と、俺が反応する間もなくセリオが俺を抱きすくめ。

 ちゅっ……。

「んむっ……んぅ、んっ……」

 ……ぷはぁ。

「お、お釣りをどうぞ……」

「……そりゃ、どうも」

 ったく、払った分より多く釣りもらってどうするんだっての。

 ずずず〜……っ。

 照れ隠しに、少し冷めたお茶をすすってみたりして。

「浩之さん」

「ん? 今度は何だ?」

「今度からは、マルチさんと談合して値を吊り上げます。お覚悟くださいネ」

 にこっ。

「だ、談合って……」

「はい? おだんごは、なでなで5回ですよう」

 おおっ、いつの間に。

「よしよし、もらおうか」

 なでなでなでなでなで。

「はいー、毎度ありですぅ♪」

 うむ、美味そうな餡団子だ。

「セリオ、お茶をもう1杯くれ」

「……高いですよ?」

「後払いも可?」

「無論デス」

「よし……じゃ、お茶もらおうか」






 その後。
 2人が食い物や飲み物をやたらと持って来たもんで、ついつい後払いにして
どんどん飲み食いしてしまった俺だった……その晩は、借り入れ分を『返済』
するのに苦労したさ。

 ……その後、2人から更に『お釣り』をもらったりしてから。
 結局、ろくに眠れなかった。






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