へなちょこセリオものがたり

その62「メッセージ」








 浩之さん。

 あなたの名を呼ぶ度に、高鳴る胸。
 その顔を見る度に、締め付けられる胸。

 あなたも私を見る度に、同じ気持ちになってくれているのですか?
 それとも……。






 あなたが笑うと、私も嬉しい。
 あなたが悲しむと、私も涙ぐむ。
 そう……私は、あなたと共にある。
 
 だから、怒らないで。
 だから、1人にしないで。

 だから、嫌わないで……。






 あなたの気持ち、全部知りたい。
 ……でも、全ては知りたくない。

 もしもあなたの心の中に、私の居場所がなかったら?

 もしも……。






 嘘でもいい。
 抱きしめて欲しい。






 『好きだよ』って、言って欲しい。
 『愛してる』って、言って欲しい……。






 ……でも。
 ……だから。

 浩之さんに、伝えたい。

 私の気持ち……全部伝えられるか、わからない。
 でも、伝えずにはいられない。

 あなたへの想いを。
 私の想いを……。






 ……私は、メイドロボ。

 わかっています。
 わかっているつもりです。

 でも……。






 『恋』。
 『愛』。

 浩之さん、あなたは罪な方ですね。
 それを知るはずのなかった私に、それを教えてしまったのですから。

 ……知ってしまって、後悔したか?
 そんなものは、有り得ません。
 私も、ロボットですから。

 所詮、作り物。
 それは、偽りのココロ。

 ……でも。
 浩之さんが、いてくれる。

 それが、私のココロの支え。

 あなたがいてくれるから、『ココロ』を実感出来る。
 あなたがいてくれるから、『幸せ』を感じられる。






 作り物でもいい。
 偽りでもいい。

 今、感じているこのキモチ……。

 私にとっては、それだけが真実。
 この幸せだけが、真実。

 あなただけが、真実……。






 あなたと一緒に。
 ずっと、一緒に。

 それだけが、私の望み。

 ……それは、わがままでしょうか?
 ……それだけが、私の望みなのに?






 ……わがままと言われても、構いません。
 それでも、一緒にいたいのデス。

 ロボットが『恋』をしては、おかしいですか?
 ロボットは、いつもロジカルな思考をしなくてはいけないのですか?

 この気持ち、確かに感じています。

 それは、切なさ。
 それは、暖かさ。

 この気持ちまでが、作り物だとは思いたくありません。
 ……浩之さんが、愛してくれている限りは。






 ……だから。

 お願いです、浩之さん。
 私達と……ずっと、一緒に……。






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