へなちょこセリオものがたり

その73「おねだり」








「浩之さん、お願いがあるのですが」

「おっ……どうしたセリオ、やけに改まって?」

 神妙な顔して、俺の前に立ったセリオ。
 俺はというと、マルチを抱えながらソファーの上で寝転がっているという、
いつも通りな状態だ。

「ええ……実は、ちょっと買っていただきたいものがありまして」

「ふみゅ? セリオさん、おねだりさんですぅ〜」

 マルチが楽しそうに顔を上げ、言う。
 お前はいつも甘えんぼさんだよな、とか思いながら頭をなでてやったりして。

「ははは……セリオがベッド以外でおねだりするのも珍しいな、おい?」

「…………」

 セリオは真っ赤になって俺を見つめたまま、しばらく何も言わなかった。












 結局その場はセリオが沈黙したままだった為、うやむやのままで終わり。
 晩飯を食い終わって自室でごろごろしていると、セリオがやってきた。

「おお、セリオ。もう今日の仕事は終わったのかな?」

 なら、一緒にごろごろしようぜ。
 そう、誘おうとしたら。

「…………」

 ちーっ、もぞもぞ……ぱくん。

「をうっ!?」

 ……はむはむ。

「おおおおおうっ!!」

 にぎにぎ……さわさわっ。

「ああっ、あっ……あっ」

 ……はむあむはむあむはむはむあむ。

「いっ、イイぞセリオっ! 俺、もうっ……」

「…………」

 もぞもぞ……ぢーっ。

 と。
 今の今まで情熱的な視線で俺を見つめていたセリオだったが、突然に興味を
失ったかのように俺から離れた。

「あ、あの……セリオさん?」

 そ、そんな途中で何事もなかったかのようにしまわれても(爆)。

「たった今『いい』との了解をいただきましたので、私はこれにて」

「……はい?」

「先程お願いした時には、まともに取り合っていただけないようでしたので」

 って、をひ。

「……もしかして、今の『イイぞ』ってのが了解の返事ってことに?」

「ええ、そうデス」

 笑いながらハンカチで口元を拭いているその姿が、何とも悔しい。
 ふと見ると、髪の中から日本刀か何かのチラシを取り出している。

「……だぁぁぁぁっ!」

「ひぅっ!?」

 ぐいっ……ばすん!

 俺は問答無用でセリオを抱き上げ、ベッドに転がして。

 しゅしゅん……すぽーんっ!

 いきなりのことで何が何やらわかってないセリオの服を一瞬で脱がし、その
上に覆い被さって一緒に布団を被る。

「浩之さん、いつの間にこんなテクニックを……」

 布団からお互いに頭だけ出して。
 抵抗する間もなく裸に引ん剥かれたセリオは、身体を隠すでもなく俺の背に
両腕を回していたりして。
 ……抵抗する気もなかったのかもしれないが。

「人間は時として、自分の能力以上の力を発揮することが出来るのだ……例を
言えば、今みたいにその気にさせられたのに途中で止められた時とか」

「なるほど……勉強になりマス」

 納得するなよ。

「そういうわけでだ……俺も色々欲しいものがあったんだよなぁ」

「え、えーと……毎月の仕送りの半分までなら何とかいたしマス」

 何故かそこで頬を染めるセリオ。

「一般家庭の統計的に見ると……1つだけ額の大きなものより、小額のものを
いくつかという方が成功率が高いようデス」

 彼女は俺の背中に、『の』の字を描きながら。
 セリオが何を言わんとしているか察した俺は、ニヤリと笑い。

「へぇ……俺は欲張りだぞ?」

 艶めいたセリオの視線を受け止めながらそう言うと、彼女は嬉しそうに。

「そ、それは結構なことですネ……♪」












 ……成果報告。
 セリオは日本刀一対(刃引き済み、後に刀身をセラミック製に換装するとの
こと)、俺はおニューのテレビゲーム機とソフト少々をゲットすることに成功
したのだった。

 おねだり成功率は70%。
 特殊効果として、次の日のセリオは一日中顔が赤かった(爆)。






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