へなちょこセリオものがたり

その82「いつも傍にいて 5」








「おお……もう夕方かぁ」

「晩ご飯は、どうされます?」

 今日はあんなに一生懸命働いてたってのに、まだ働く気なのかよ。

「いいよ、今日は……お前達も疲れただろ? たまには俺が用意するぜ」

 俺がそう言うと。
 ソファーにぐて〜っとなっていたマルチが、ばっと起き上がって。

「駄目ですぅ! まだ疲れてませんっ、ご飯は私達が用意させていただくん
ですぅ!」

 その時。
 マルチの方から、妙な音が聞こえてきて。

 ぴこーん、ぴこーん、ぴこーん……。

「……あうう」

「バッテリー切れか……俺はいいから、セリオも一緒に充電して来いよ」

 普段より、明らかに忙しかったんだもんな……そりゃ、消耗も激しいさ。

「……はい、お言葉に甘えさせていただきマス」

「ですがっ! ご飯は絶対に私達が作りますから、待っててくださいねっ!
うぃしゃるりたーんですっ!」






「……今日は、楽しかったですか?」

 晩飯は、シチューだった。
 朝と同じく、またも2人が俺に食べさせてくれた。

「ああ、最高だったよ」

 マルチが、ナプキンで俺の口元を拭ってくれる。

「ありがとうな、2人とも」

「「……はい」」

 彼女達は……その一言を聞くと、ほっとしたような顔になって。
 じーっと俺の顔を見つめて、微笑んで。

「ん?」

「……いえ、何でもないです」

「……ですぅ」

 疲れてるのかな?
 ……ま、今日は俺も早目に寝るつもりだったし……テレビとか観てないで、
速攻で風呂に入ってベッドに潜ろうかな(爆)。












「はやー……も、もう駄目ですぅ……」

「……セリオは?」

「わっ、私も……不覚ながら、もう……」

 荒い息を、必死で調えている2人。
 俺はその真ん中に寝っ転がり、その肩を抱き寄せて。

「俺からの、せめてものお礼」

 ぎゅっ。

「……今日のお誕生日、何点くらいだったでしょうか……」

 …………。
 そうだなぁ。

「今日の採点は、95点」

「ほえ? 100点じゃないんですかぁ?」

「パーティ自体は100点……けど俺が寂しい思いしてたのが、今日一日を
総合するとマイナス5点分だ」

「……寂しい?」

「お前達が忙しいのはわかってたけど、少しくらい話もしたかったな」

「たった5点分なのですか、大したことないのですネ」

 お前なぁ……。
 大したことないって言っても、好きな子と一緒にいられないってのは……
結構寂しいんだぞ。

「馬鹿、40点くらいはたった今埋まったのだ」

 何なら、もう5点分……頑張ってみるか(爆)?

「……はっ、はやや(ぽっ)」

「でも、すっげぇ嬉しかったよ……本当にありがとうな」

「……いえ」

 そして、マルチもセリオも俺の顔をぽーっと見つめて。

「ん? 何だよ、さっきも」

「いえ……浩之さんの顔を見ていると……何だか、とても幸せで……」

「浩之さんに喜んでもらえて、私達もとっても嬉しいんですー」

 ほわぁぁぁ……。

 2人の言葉を裏付けるかのように、彼女達の頬は朱に染まっていて。

「……お前達のその気持ちが、何より最高のプレゼントだぜ」

 ちゅ、ちゅ☆

「これからも、俺の傍にいてくれよ」

「……はい」

「勿論ですぅ♪」

 軽く2人と口付けを交わして。
 その後俺が寝入るまで、彼女達は優しく俺を見つめていてくれたのだった。






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