へなちょこセリオものがたり

その83「美味しさのひ・み・つ♪」








「セリオぉ、何か飲み物くれよぉ〜」

「うふふ……カ○ピスでよろしいですか?」

「おうさ」






「お待たせしました」

「おう、さんきゅ」

 ごくごくっ。

「うっひゃぁ……よく冷えてるなぁ」

 氷も入れてないのに……水、冷蔵庫で冷やしてたのかな?

「ええ」

「……むっ!?」

 なっ、何かいつもの味と違う……。
 いや、カル○スはいつもの白いアレなんだろうけど……何かが違う。
 どこが違うのかって聞かれると、答えに困るけど……何て言うか、隠し味
が利いてるぞ。

 言うなれば、胸の奥が踊るような……心暖まる、青春の味だ(どんなだ)。

「……気付かれましたか。さすがはカルピ○愛好家ですネ」

「何か入れた?」

「いえ、ちょっと新しい作り方を……秘密ですケド」

 む、むぅ……気になる。
 時々やってもらってる作り方なら、生温いはずだしな(爆)。

「…………」

 ごくっ、ごくっ……。

「ぷはぁ、美味いぜ……セリオ、もう1杯頼む」

「了解」






「…………」

 セリオは、空になったコップを持ってキッチンへ。
 俺は当然の如くその後を追って。

「ふんふんふ〜ん♪」

 冷蔵庫から、茶色の瓶を取り出して。
 空のコップを、1回水洗いして。

 ……何だ、至って普通じゃないか。

「……さて」

 セリオは瓶を掴み、蓋を開けると。

 ぐいっ! ……ぐび、ぐびっ。

「…………」

 やるなぁ、セリオ。
 なかなかいい原液の飲みっぷりだ。

 きゅっ、じゃぁ〜……っ。

 今度は、別のコップを持って水道から水を汲んで。

 きゅっ、きゅっ。

 ……ごくごくごくっ!

「ま、まさか……」

 俺が見てるのには気付いてないようで。
 お腹の辺りに手を添えて、セリオは数回ぴょんぴょん跳ねて。

 そして、俺のコップを口の前に構えると。

「……げよげよげよげよ」

 じょぼじょぼじょぼ……。

「……ふぅ♪」

 う、うぁぁ……ビ、ビジュアル的にキツいかな……。
 今のを見た後だけに、そんな爽やかに口元を拭かれても……。

 ……まぁ、どんな顔して持ってくるのか……気付かれないうちに居間の方
に戻っておこっと。






「お待たせしました」

「あ……ああ、さんきゅ」

「どういたしまして♪」

 ……可愛い笑顔だ。
 まるで、アレは俺の見間違いだったかと錯覚してしまうような。

 楽しそうで、嬉しそうで。
 とっても、可愛いと思った。

 ……飲む。
 ああ、俺は飲むさ。
 そう、アレがどうかしたのか?
 俺の為にあんな真似してくれたんだぞ、それを飲まないでどうするっ!

 がしっ!

「いただくぜっ!」

 ごくっ、ごくっ、ごくっ……。

「ぷはぁっ!」

 たんっ!

「いい飲みっぷりですネ♪」

 俺が全部飲み干したのがそんなに嬉しいのか、セリオは笑顔のままコップ
を回収して。

「……何か、嬉しそうだな」

「だって、浩之さん……見てらしたんでしょ?」

 ぽっ。

 ……や、やっぱりバレてるぅぅぅ。

「だ、だって……よく冷えてたし、隠し味が何なのか気になったんだよぉ」

「原液は、ちょっとキツいですけど……浩之さんが美味しく飲んでくださる
のでしたら、これからも……」

 にこっ。

「……よろしく頼むぜ」

 作るトコさえ見なけりゃ、最高なんだ。
 美味いもの飲んで、セリオの極上の笑顔も見られるんだし。

 作るトコさえ見なけりゃ、な……。

「冷えてたのは、体内クーラーを全開にしたからです。そして隠し味は……
わ・た・し・デス♪」

 顔真っ赤だぞ、おい。
 そんなに恥ずかしいんなら、無理して言うなっての(てれっ)。

「そうなのか? いつもはあんな味じゃないと思ったけど……」

 美味しいのには違いないが(爆)。

「…………(赤っ)」

 あ。

 ばしゅぅ――――っ!

「…………」

 ぱたふ。

「せ、セリオっ!」

「はら〜……」

 くてんくてんになってしまったセリオ。
 運よく割れなかったコップをテーブルに置いて、彼女を抱き上げて。

 ……どうするかって?
 勿論、目が覚めたら……彼女の『味』を確認させてもらうのさっ!






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