へなちょこセリオものがたり

その98「好きだから」








 何てゆーか、セリオだ。
 今日はセリオの日なのだ。

 だから、セリオとべたべたするのだ。

「……何か?」

「いんや、見てるだけ」

「…………(ぽっ)」

 可愛いなぁ……。
 こんなに可愛いんだから、俺が○☆や△□×なことを考えても仕方ないよな。

「なぁ、セリオ……抱きしめてもいい?」

「……はい? 別に構いませんが……」

 というか、お願いしマス。
 彼女の眼は、そう言っているように見えた。
 ……ま、俺の勝手な思い込みかもしんないけど。






 だきっ。

「……ん〜、いい匂いだなぁ」

 マルチもそうだが、セリオも随分いい匂いがする。
 香水とかそんなんじゃなくて……石鹸の香りも混じった、何かいい匂い。

「この匂い、大好き」

 くんくん。

 鼻を鳴らしてセリオの髪に顔を埋める俺。
 何か本当、安心するって言うか……。

「浩之さん、子供みたいですネ」

 くすくす、と少し身を震わせて。
 でも、優しく俺を抱き返してくれて。

「子供でいいよ……セリオとこうしていられるんならさ」

「……子供にしては、随分えっちですけどネ」

 うむ、確かに。
 子供じゃ、お前やマルチを『悦ばせる』コトは出来ないしな(笑)。
 少なくとも、それが俺のお前達にしてやれることであり……そんなお前達を
見ることが出来るのも、幸せなことだと思うし。

「えっちは嫌いか?」

「いえ……浩之さんなら、大歓迎デス……♪」

「そっか」

「ですけど」

「ん?」

「たまには、今みたいな時間も嬉しいですネ」

 ……そっか。

「ん。俺もたまにはこーしていたいぞ」

「はい」

 ……ぎゅっ。

「セリオ」

「はい?」

「今……すっげぇ幸せな感じだ、俺」

「……はい♪」

 しばらく、そのままでいた。






「……なぁ」

「はい?」

 俺は、言う。
 言わなくてもわかってるかもしれないけど。

 でも、言葉にして伝えたいから。

「好きだよ、セリオ」

「…………」

「セリオ?」

「……私も、浩之さんが大好きです」

 その言葉を、夢現で聞いて。
 俺はいつしか、セリオに抱かれながら眠りに落ちるのだった。












「ん……」

「お目覚めですか?」

 いつの間にか、辺りは薄暗くて。
 いつの間にか、セリオの胸に抱かれて。

「んー……まだ……」

 ふにっとしたセリオの胸に、顔を埋めて。
 セリオの香りと感触と暖かさを、まどろみの中で楽しみながら。

「ふふっ……」

「何だよぉ」

「いえ……可愛い、と思いまして」

 ……俺が、可愛い?

「変な奴だなぁ」

「浩之さん程ではありません」

 ぬぅ、あー言えばこー言う。
 ……でも、別にいいや。

「今日の飯は何だろうなぁ」

「マルチさん、お魚を買って来たみたいでしたケド」

 ふむ。
 焼き魚か何かかな。

「まだ時間はあるかな?」

「ええ、まだお夕飯には早い時刻ですネ」

 そっか。
 んじゃ、もうしばらく……。






 むく……。

「あれ? セリオ、どこ行くの?」

 不意に、セリオが起き上がる。
 マルチが呼びに来てくれるまで、このままくっ付いていたかったけど。

「……ええ、ちょっと」

「むー……残念」

 いや、マジで。

「……あのさ、また後でな」

「はい? 何を言われます」

 何ぃ?
 まさか、もうべたべたは終わりとかっ!?

「嫌ですね……お夕飯までには、まだ1時間はありますよ?」

 ゆっくり起き上がって、俺の手を取って。
 恥ずかしそうに、にっこり微笑んで。

「……そっか」

 ぎゅっとその手を握り返して、俺も微笑む。

「なら、セリオの可愛い顔……もっと見られるのか」

「……お手柔らかに」

「それはお前次第だぞ」

 お互いに、恥ずかしさを抑えながら。
 でも、しっかり握った手は決して離さない。

「はい……頑張りマス♪」

「……よっし!」

 ぐいっ!

「きゃ」

「そんじゃ、早速……」

 俺の48ある必殺技のうちの1つ、『お姫様抱っこ』だ。
 マルチもセリオも、これがかなりのお気に入り。

「…………」

 セリオは運ばれている間、何も言わず。
 でも、しっかり俺にしがみ付いていてくれたのだった。






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