へなちょこセリオものがたり

その99「みの虫のように」








 部屋を掃除してたら、寝袋が出てきた。
 封筒型ってやつだ。

「あら、珍しいものをお持ちで」

「お山に登るんですかぁ?」

「いや……昔、親父からもらっただけのような気がする」

 でも、もらった日から3日間くらいは嬉しくて嬉しくて。
 お袋が止めるのも聞かず、布団じゃなくて寝袋で寝てた気もする。

「……久々に、コレ使ってみようかなぁ」

 一応、広げてみて。
 ……うん、別にカビたり虫食ってたりはしてないな。

「あっ、あうあう……1人で寝るということですかぁ?」

「まぁ、そうなるのかな」

「…………」

 大きいサイズだったら、3人でゆったり入れたんだろうけど。
 でも、さすがに……身体の小さいマルチと一緒でも、ぎゅうぎゅうになって
しまいそうだ。

「……やっぱ、却下」

「ほっ……安心しましたぁ」

「…………」

 うんうん。
 お前達に寂しい思いなんか、させたくないからな。






「そっ……それでは、おやすみなさい……」

 さっきまでは息の荒かったセリオだが、段々落ち着いてきたようで。

「ん。いい夢見ろよ」

「はふぅ……浩之さぁん……」

 んー……マルチはまだ気ぃ失ったままか……。
 起きても寂しくないように、いつも通り抱きしめながら寝ることにしよっと。






「……ん?」

 もぞもぞ。

 ふと違和感を感じて目が覚めると、何だかそこら中もぞもぞ動いてる感じ。
 ……マルチが起きたのかな?

「マルチさんっ、そっちはそうじゃありませんっ」

「あややっ、しまったですぅ〜」

 ……何か、ぎゅうぎゅうと全身が締め付けられるような……。
 身体が全く動かない……いや、動けない。

「お前ら、何をしている?」

「……はっ!? お目覚めですかっ?」

 あ、外がもう明るい。
 もーすぐ起きる時間だったか。

 って、そんなこと考えてる場合じゃなくて。

「質問に答えろっ」

「あら……ご自分のお立場、ご存知ですか?」

「……わからないから聞いてるんだってばよ」

 ぬうううう、昨夜もあんなに可愛かったのに……今はセリオが悪魔に見える。

「ま、マルチっ! 一体何をしてるのか教えてくれぇ!」

「……それは、今からわかりますぅ」

 ま……マルチまで……。

「……ああ、いいさ! 好きにしやがれっ!」

 こうなりゃ俺も男だ、腹ぁくくってやるぜ!






「って……」

「やっと気付きましたか」

「寝ぼすけさんですぅ♪」

 ぎゅうぎゅうに感じてたのは、2人が俺を抱きしめていたから。
 全く身動き出来なかったのは、1つの寝袋に3人も入ってたから。

 っていうか、ぴったり密着・ぴっちぴち。

「お、お前達……」

 ううっ、お前達は……全く、いつもいつも……。

「あら……感激のあまり、言葉もないようですネ」

「ううっ、メイド冥利に尽きるのですう「違うわぁぁぁっ!」

 出られるのかっ!? お前ら、コレから出る方法考えてたのかっ!?
 入る時は何とかなっても、手足が拘束されたら出られんわぁぁっ!!

「「……はい?」」

「あのさぁ……試しに、1回出てみよか」

「「はいっ」」

 もぞもぞ、もぞっ……。

「……な?」

「あうあうあう」

「……まさか、こんな狡猾な罠が張られているとは……」

 罠なのかい。
 っていうか、気付けよセリオ。

「……どうしましょうかぁ」

「んー……ま、しばらくこのままでもいいんでない?」

「……結果オーライ、ということでどうか一つ」

 ええい、こうなったのもお前のせいだっつーの。






 ……さっきはあんなこと言ってたけど。
 朝のお約束、朝トイレに行きたくなった俺。
 そりゃあもう、必死だったさ。

 俺が出るのを邪魔する2人を、何とか蹴散らして。
 最悪の事態だけは、どうにか免れた俺なのだった。
 とりあえず、俺の熱いベーゼで2人は沈黙したのだ(爆)。





 ……でも、用足ししてからまた寝袋に潜ったけど(爆)。






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