へなちょこセリオものがたり

その161「赤き玉の伝説」








「うー、トイレトイレ」

 がちゃ、ばたん。

 俺は急ぎつつも優しく可愛い息子を取り出して、便器に向ける。

 じょぼじょぼぼ……。

「ふー……」

 この排尿感が堪らんのだよなぁ……と、ぼーっと天井なぞ眺めて。
 ……っと、もう終わりでござる。
 ちょいちょいっと息子を振り、今回の成果を見てみると。

「……赤いッ!?」

 ちょっと待て、本来黄色いハズだろう?
 洗浄剤とか入れていたとしても、青や緑に黄色が混ざって……いや赤だった
としても、黄色が混ざればオレンジだろう!?

「せせせセリオ! 俺どっか身体変だ!」

 息子をしまうのも慌しく、居間で繕いものをしていたセリオに相談する俺。

「はい? 性癖以外は一般高校生男子として正常だと思われますが?」

「いや、今トイレでな」

 俺はかいつまんで事の次第を話した。

「ははぁ……なるほど」

「な、何なのかわかったのか?」

「ええ、これはきっとアレに違いありません」

 セリオは人差し指を俺の鼻先に当て、ちょんと突付く。

「伝説の『赤玉』ですネ」

「あ、あの『出たらもう男として終了〜からんからん♪』ってアレか!?」

 そんな、こんなに早く俺にそれが訪れるとは。
 ううう、まだあんなことやそんなことを2人に試す前に男が終わってしまう
とは……。

「赤玉が溶けて赤い尿になったものと思われマス」

 がくっ。

 俺は絶望に押し潰されそうになり、思わず膝を付く。

「まぁ浩之さん、そんなに気を落とさないでくださいな」

「うう……そうは言ってもな」

「例え愛の営みがなくなったとしても、私達の愛は変わりません」

 セリオはそっと俺を抱き、優しく頭をなでてくれて。

「セリオ……」

 ……いや待て。
 セリオがこんなに優しいハズがない。
 つーか実際出たらそれは結石だろ、赤玉。

 ぎゅむ。

 俺はセリオにヘッドロックをかける。

「言え。何かしただろう?」

「ちょっ、チョークチョーク」

 ぱんぱん、と俺の肩を叩くセリオ。
 が、平気そうだったのでそのまま首をへし折ってやった。

 ごぎゃん……ぷしゅー。

「あー……人間だったら殺人犯ですよ、浩之さん」

 ぱしゅ、ぷしゅー……。

 どこかからエアの漏れる音を出しながら、セリオは首を接ぐ。
 何事もなかったかのように言うセリオに、俺も言ってやった。

「お前だからやったんだよ」

「まぁ……信頼されているのですネ」

 ぽっ。

 ……それはちょっと違う。

「で、何をした?」

「ええ、ちょっと驚かそうとトラップの部分にネスラー試薬を混ぜて……」

「ああ、あのプールに入れると数人が青ざめるってやつか」

 確か尿に反応して黄色や褐色に変わるとか何とか。

「……セーリーオー」

 ぐりぐりぐり。

「ああっ、こめかみはマジ痛いのでご勘弁を」

「お仕置きだべぇ――――!」

 しぱっ。

 セリオの着衣を一瞬で剥ぎ取る俺。

「おらー! びっくりさせた分、たっぷり償ってもらうからなー!」

「あ、あひぃ♪」

 がばぁ。






「ふー……」

 3ラウンドくらい終えて、一息吐いていたら。

「あの、浩之さん……」

 何だか心配そうな声で、セリオが自分の股間に手を伸ばしていて。

「どうした? もう1ラウンドくらい行くか?」

 ふふふ、セリオも好きよのう。

「いえ、先程いつもとは違う異物が浩之さんから排出されまして……」

 セリオ液やら俺液にまみれ、べっとりとしたセリオの掌には。
 小さな赤い玉が、ちょこんと載せられていた。

「……冗談だろ?」

「私もそう思いたいのですが……」

 がびーん。






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