へなちょこセリオものがたり

その170「藤田家予算案」








「浩之さん、今期の決算報告デス」

 セリオが家計簿を持ってやって来た。
 俺は、そのページをぱらぱらとめくり。

「おー……黒字か。やりくり上手いな、セリオ」

「ふふふ、この計算尺は伊達ではないのデス」

 ちゃきっ。

「お前なぁ……算盤とか計算尺とか、何でそんなの使うのよ」

 科学の申し子なのに、今更計算尺もないだろう。

「検算は算数の基本ですヨ」

 まぁ、今更何も言うまい。

「で……この浮いた金、どうする?」

「私としては、来期の予算に回すか貯金するのがオススメですが」

「うーむ……」

 セリオの性格からして、いざと言う時の為に少しへそくりも作ってあるかと。
 とすると、この浮いた金は自由に使えるものであるな。

「浩之さぁん、私欲しいものがあるのですぅ〜」

「ちょ、ちょっと待てな。今考えるから」

 俺も新しいゲーム機とか欲しかったのだが。

 いや、こんなわがままを聞いてやるのも男の甲斐性。
 ここはこいつらに譲ってやるとするか。

「んじゃ、お前らの好きなようにするかぁ」

「「は〜い♪」」






 街に出て、銀行で半額を貯金してセリオはほくほく顔。
 さて、次はマルチの欲しいものか。

「で、マルチは何が欲しいんだ?」

「はい、実は……」

「愛が欲しいのですぅ」

 べしっ。

「で、何が欲しいんだ?」

 あっさりシカトする俺。

「はうう……で、では幸せを……」

 ぴしっ。

 今度はデコピンが炸裂。
 さすがのマルチも堪えたようだ。

「で?」

「ううっ……キュートな戯れでしたのにっ」

 さすがにもう『夢』とか言う気はなくなったらしい。

「で?」

「あうあう、浩之さんに精の付くものを食べていただきたいと……」

「む」

「……最近淡白ですからねぇ」

「そう思いますよね、セリオさん」

 むぅ。
 二人してそう言われるとそんな気もして来る。

「ぬうう……わかったよ、今夜は頑張るから」

「今夜だけですかぁ?」

「いや……しばらくスタミナ料理でも作ってくれ。金の続く限り」

「「はいっ!」」

 最近マンネリ気味だったかなぁ……。
 よし、今夜からは色んなバリエーションを考えてみよう。

「浩之さん」

「ん?」

「私のお道具袋に色々と入っていますから……今夜からそれを使っていただけ
ますか?」

 ぽっと頬を染めながら言うセリオ。

「お、おう」

 色々ってことは、やっぱり色々なんだろう。

「……さて、そんじゃスーパーに行くかぁ」

「「は〜い」」

 彼女達の期待を裏切るわけには。
 俺はそんな重さを肩に背負いながら、二人の後を歩くのだった。






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