へなちょこあかりものがたり

その1 「屋上にて」


 へなあかり本編に入る前に、状況を説明させていただきます。
 マルチは浩之の家に引きとられていますが、それほどへなではありません。
 セリオ&綾香(&芹香)は浩之の家には来ていません。
 それでは、以上のことを前提に、へなあかりの世界をお楽しみください。







 ぴんぽーん

「浩之ちゃ〜ん、朝だよぉ〜」

 ぴんぽんぴんぽん

「浩之ちゃ〜ん、早く起きないと遅刻しちゃうよぉ〜」

 朝、浩之ちゃんを起こして、それから、いっしょに学校に行く。それが私、
神岸あかりの日常なのです。
 今日も、いつものように浩之ちゃんの家の前で、チャイムを押しながら声を
あげているのでした。

「はいぃ〜」

 聞き慣れない、けどどこかで聞いた声が返ってきました。とてとて、という
足音がして、玄関の戸が開かれます。

「あ、神岸さん〜。おはようございますぅ〜」

「マルチちゃん?」

 どうしてここにマルチちゃんがいるの? ここ、浩之ちゃんのうちだよね?

「はい〜! 今日から、ここに住むことになったんです〜」

 マルチちゃんが浩之ちゃんといっしょに住むの? 私、キスもしてないのに、
マルチちゃんはもう同棲しちゃってるの? そ、そんなのないよぉ。
 私も浩之ちゃんと……。でも、浩之ちゃんは私のことどう思ってるのかな?

「浩之さんは、まだお休みですけど……」

 あ。いけないいけない。

「あ、早く起こさないと遅刻しちゃう! あがるね?」

「ほへ? ああっ、もうこんな時間ですぅ〜」

 ここの階段、こんなに狭かったかな。もっと広かった覚えがあるんだけど。
そんなことを考えながら、浩之ちゃんの部屋の前に立って、小さく深呼吸して。

「浩之ちゃ〜ん」

 ドンドン。

「浩之ちゃん、朝だよぉ〜」

 ドンドンドン。

 がちゃ。

 あ、ドアが開いて、中から浩之ちゃんがでてきたよ。起きれたんだね。

「うるせぇ……っとに」

 まだ寝ぼけ眼で、頭を掻きながら。

「ほら浩之ちゃん、もう8時だよ。早くしないと、遅刻しちゃうよ」

「ああ……わかった」

 それだけ言って、浩之ちゃんはまた部屋の中に戻っちゃった。

「ここで待ってるからね」

「おう」

 部屋の中から衣擦れの音が聞こえてくる。
 今、浩之ちゃんが着替えてるんだね。夏、プールに行ったときとかに見える
浩之ちゃんの身体って、細身なのにけっこうたくましいんだよね。
 あの腕で抱きしめられたら、私、もう……。


「待ったか?」

 えっ!?
 いつの間にかドアが開いてて、浩之ちゃんが私の後ろに立ってた。いつから
いたんだろ。いつもみたいに、私の考えてることわかっちゃったかな。

「何あわててるんだよ。……さては、またなんか変なこと考えてたな」

 ぺち。

「いた」

 もう。
 でも、浩之ちゃんじゃなかったら私の考えてることなんか判らないもんね。
浩之ちゃんだから判るんだよね。そう考えると、浩之ちゃんにお見通しなのも
何だかうれしい気分。

「えへへ」

「ほら、行くぞ」

「うん」

「いってらっしゃいですぅ〜」


 ぽかぽかお日さまいい気持ち。花の散った桜並木の下を通って学校へ行くの。
浩之ちゃん、二人でゆっくり行けるように、ちょっと早めに起こしてることに
気付いてるかな。

「いい天気だよね」

「そうだな」

 そっけない返事。でも、それだけでもうれしいの。

「今日はお弁当作ってきたからね」

「お、そうか。サンキュー」

 あれ以来、ときどき作ってきてあげてるの。いつもパンばかりじゃ、栄養が
偏ってしまうから。それに、浩之ちゃん、家でもあまり料理しないみたいだし。

「おはよう、浩之。おはよう、あかりちゃん」

「おはよ、ヒロ、あかり!」

 雅史君と志保が後ろから声をかけてきた。ちょっとしたデート気分はこれで
おしまい。みんなでいるのも楽しいけど、ほんとは二人きりになりたいのよ。
わかってね、浩之ちゃん。


 お昼休みになって、大きいお弁当箱と小さいお弁当箱を持って、いそいそと
浩之ちゃんの席に行く。今日のお料理は自信あるんだからね。

「浩之ちゃん」

「おう。……屋上行くか」

「うん」

 浩之ちゃんのあとについて、屋上に行く。フェンスのそばに適当に座って、
お弁当を広げる。

「お、うまそうだな」

「えへへ……」

 浩之ちゃんのために愛をこめて作ったんだもん。浩之ちゃんの嫌いなものは
なんにも入ってないの。藤田浩之研究家の私が言うんだから間違いないよ。

「いただきます」

 もぐもぐ。うん、味つけも成功してる。ちらっと浩之ちゃんのほうを見たら、
浩之ちゃんが本当においしそうに食べてくれてた。
 これだけおいしそうに食べてくれると、私も作りがいがあるよ。もぐもぐ。
あ、浩之ちゃんのほっぺにご飯粒がついてる。
 き……キスして取っちゃおうかな。そしたら浩之ちゃん、どんな顔するかな。
きっと、驚くよね。あ、でも、嫌がられたらやだな。もしかして、興奮して、
そのまま押し倒してきたりして……。

 コンクリートの上に仰向けに押し倒された私の制服の裾から、浩之ちゃんの
手が入ってきて、ブラの上からおっぱいを撫でるの。こんな昼間から、こんな、
誰から見られるか判らないところで。

 手の動きがだんだん激しくなってきて、私の制服が完全にめくれちゃって、
ブラがむき出しになっちゃう。やだ、そんなの恥ずかしいよ。
 でも浩之ちゃんの手は止まらなくて、今度はブラの内側に指が入ってくるの。
少しだけだけど大きくなってきてる私のおっぱいを優しく揉みながら、乳首を
コリコリって軽く押しつぶすみたいにして刺激してくるの。

 きっと、私、我慢できなくなって、声をもらしちゃう。

 そうしたら、浩之ちゃんの手がお臍の横を滑って下りていって、スカートの
ホックを外すの。ファサッ、って音を立てて、スカートがコンクリートの上に
広がって。こんなことなら、もっとかわいいパンティにしてくればよかった。
 浩之ちゃんの手が、私の太ももの内側を撫で上げてくる。その手が熱くて、
なんだかとても気持ちいいの。何度も何度も折り返し折り返し太ももを撫でて、
少しずつ少しずつ上に上がってくるの。

 ああ、もうダメ。浩之ちゃんに、私がこんなに感じてるのがわかっちゃう。
浩之ちゃんの指が、私のショーツの上を軽くなぞってくる。ジュクッ、ていう
いやらしい音がするの。そんな、いつもは私、こんなにいやらしくないのに。
信じて、浩之ちゃん。浩之ちゃんだからなんだよ。
 浩之ちゃんの指が私のショーツの縁にかけられて、私のショーツがゆっくり
引き下ろされていく。ベチョベチョに濡れたショーツが引き抜かれて、私の、
まだ誰にも見せたことのないところがさらけ出される。
 浩之ちゃんが、そこをじっと見つめてる。浩之ちゃんがベルトを緩めてる。
ああ、ついに私、浩之ちゃんのものになるのね。初めてって痛いって言うけど、
でも、それでもいいよ、浩之ちゃん。私、浩之ちゃんになら……。


「また変なこと考えてただろ」

 ぺち。

「いた」

 お弁当を食べおわった浩之ちゃんが、私の頭に軽くチョップしてきた。
 あ。わたわた。私、何考えてたんだろ。もう。
 ……やっぱり、変なことだよね。
 でも、浩之ちゃんだからなんだよ。わかってね、浩之ちゃん☆





<つづく>
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