へなちょこあかりものがたり

その11 「大きなのっぽの」








「……浩之ちゃあん、朝だよぉ」

 朝、というより、もうすぐお昼。
 いくら日曜だからって、眠りすぎは身体に毒だよ。

「浩之ちゃあん」

 とんとんとん。

 声をかけながら階段を上り、浩之ちゃんの部屋の前へ。

「浩之ちゃん、入るよぉ」

 きぃっ。

 そっと戸を開けて中に入ると、浩之ちゃんの姿はありませんでした。

「……あれれ?」





「浩之ちゃん、どこぉ?」

 とてとてて。

 階段を降りながら、浩之ちゃんの名前を呼んでみても返事はなくて。

「浩之ちゃあん」

 お台所。

「浩之ちゃあん、どこ行っちゃったのぉ?」

 私の使ってる部屋。

「浩之ちゃぁん……」

 もう一度、浩之ちゃんの部屋。





 家中全部捜し回ったのに、浩之ちゃんの姿はどこにもなくて。
 マルチちゃんも今日はメンテナンスの日で。

 今日は学校もお休みなのに。
 せっかく、遊びに行こうと思ってたのに。

 何だか寂しくなって、ぽてん、とベッドに倒れ込んだら。
 ふわっ、と浩之ちゃんの匂いがした。

「……浩之ちゃんの……意地悪」

 口に出してみると、もっと寂しくなってきて。
 浩之ちゃんの枕に頭を埋めて。

 ……やっぱり、邪魔なのかな。
 いくらなんでも、いきなり押しかけてきたから、嫌になっちゃったのかな。
志保とかにも色々言われてるんだろうし……嫌になっちゃっても仕方ないよね。

「……すまん、あかり」

 謝らなくてもいいよ、浩之ちゃん……悪いのは私なんだから。
 私はすっと手を伸ばして、浩之ちゃんが下げている頭に触れる。

 まるでお母さんのように、そっと浩之ちゃんの頭を胸に抱きしめて。

「……ううん……。楽しかったよ」

 そっと囁きかける。

「あかり……」

 複雑な顔をして私のほうを見上げてくる浩之ちゃんに、私はそっと唇を重ね。

「……ね、その代わりに、今日は……私に、させて」

「あ、……ああ」

 ちょっと驚いたような表情を浮かべる浩之ちゃんをもう一度抱きしめて。
 私は、するりと浩之ちゃんの下から抜け出して。

 そして、そっと。浩之ちゃんのズボンに手をかけるの。

「……あかり」

 浩之ちゃんの優しい、それでいてどこか戸惑ったような声を聞きながら。
 私は、浩之ちゃんのベルトをゆるめ、トランクスからそれを取り出して。

「……浩之ちゃん」

 小さく囁きかけると、まだ柔らかいそれにそっと唇を触れさせた。

「……あ……あかり……」

 浩之ちゃんが、ちょっと上ずった声で私の名前を呼んで。
 うふふ。ダメだよ、まだおあずけ。

 ちょっと悪戯な気分の私。
 浩之ちゃんのわがままを聞くんだもん、これぐらいはいいよね。

 ぱくっ。

 浩之ちゃんのだと思うから、こんなこともできちゃうんだよ。

 口一杯にそれを頬張ると、ぴくぴくっと動いてるのが感じられて。
 そっとその先端に舌を這わせていくと、見る見るうちに大きく、硬くなって。

 ……浩之ちゃん、気持ちいいんだ。

「……あかり……っ」

 浩之ちゃんの手が、私の頭を押さえつけるように動いて。

「あ……あかり、出る……っ……」

 どんどん声が上ずってきて。
 口の中で大きくなっているそれが、ヒクン、ヒクンと痙攣するように動いて。

「……うっ……」

 ドクッ、ドクン。

 浩之ちゃんの精液が、私の口の中から溢れそうになる。

「……ん……んっ」

 こくん。

 口の中でネバネバするそれを呑み込んで、私は浩之ちゃんの顔を見つめる。

「……よかったぜ……あかり」

 浩之ちゃんはそういうけれど。

 私は、私の口から解放された浩之ちゃん自身を見つめて。

「……じゃ、次は……お願い……」

 私の声だと思えないぐらいいやらしい声で、おねだりの言葉を放つ。

 両足の間にある、私のソコは。
 浩之ちゃんのそれより、もっとずっと熱くなっていて。
 もっとずっといやらしく濡れていて。

 待ちきれない……もう、ガマンできない……。




 ぼーん。

 突然、柱時計の音がした。

 私は、はっと身体を起こして。
 場所は、浩之ちゃんのベッドの上。

 ……眠っちゃってたんだ、私……。

 ぼーっとする頭で、そんなことを考えて。

 え、あれ!?
 おかしいよ。そんな音のする時計なんて、浩之ちゃんの家にはないもの。
 でも……下から鳴ったよね。

 私、慌てて身体を起こして、階段を下りて。

「おぅ、あかり。どこ行ってたんだ」

「浩之ちゃん!?」

 そしたら、いたよ。

 浩之ちゃんが、いた。

 おっきな時計……柱時計かな、を、リビングの柱に取りつけてた。

「探したんだからね……浩之ちゃんのこと、どっか行っちゃったかと思って」

「ばーか。お前に何も言わないで行くかよ」

「う、うん……」

「こいつを取りに、倉庫に行ってただけだ……っておい、こら、泣くなよ」

「う、うん……」

 変だね。浩之ちゃんがいて、すごく安心したら。
 さっきまで出なかった涙が、ぽろぽろとこぼれてくるよ。

「……泣くなって言ってるだろ」

「う、うん……でも」

「でもじゃねえ」

 ぺしっ。

「あ……えへへ」

 あれれ、変だね。おかしいね。
 いつも通りの浩之ちゃん見てると、涙も引っ込んじゃったみたい。

「よしっ」

 柱時計を据えつけおわった浩之ちゃん、満足そうにそれを見て。

「さっき鳴ったばっかだからなぁ……なあ、あかり」

「え?」

「音がちゃんと鳴るまで、ここで見てようぜ」

「あ……うん」

 どさっ。

 浩之ちゃんがソファーに座って。
 私もその横に座って。

 ……こういうのって、なんか、いいよね。




<つづく>
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